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株式会社 ザガット 代表取締役 栗原 秀輔×取締役 副社長 中俣 伸輔 双子で経営する会社。 素材へのこだわりに迫る。
Shinsuke Nakamata
1983年、東京生まれ。小学生時代は鹿児島県指宿市で育つ。野球部時代、兄の栗原氏とはピッチャーとキャッチャーの関係だったことも。卒業後、和食店に入り、ふぐ調理師免許取得。現場のリーダーとして、毎年指宿市の中俣酒造に社員を引き連れ焼酎造りを行い、店長たちと築地へ仕入れに行く。
Shusuke Kurihara
1983年、東京生まれ。小学生時代は鹿児島県指宿市で育つ。小・中・高と野球部で活躍。中学時代、全国大会出場も果たす。卒業後、和食店に入り、ふぐ調理師免許取得。一卵性双生児の中俣氏と2007年創業。現在、現場は中俣氏に任せ、代表取締役として組織全体を見ている。

2016年1月掲載

築地に通い、焼酎づくりを体験。 素材にフォーカス。

── 栗原社長は本部の立場から組織全体を見て、中俣さんは現場のリーダーとして仕事をされていますね。お互いの立場の違いから出てくる温度差みたいなものはありますか? たとえば、社長としては原価率を守ることに忠実でありたい立場であるのに対し、現場はおいしいものを仕入れてお客さまによろこんでいただきたいという、そういう考え方の差みたいなことで、ご苦労はありますか。

栗原 「毎月、苦労してます(笑)。ふたりで数字を見て、原価率高いんじゃないの!って、ふたりで頭をかかえています」

中俣 「私たちは中学時代は野球の内野手、小学校ではピッチャーとキャッチャーの関係だったので、気が合うし仲がいい反面、議論もケンカも多いです(笑)。ただ、お客さまがよろこんでくれることと、社員や関係者の幸せを考えていること。これにきちんと繋がっていればいいのではないかという、着地地点だけははっきりと共通認識としてあります」

栗原 「私たちは、創業110年以上続く中俣家の焼酎造りを伝承しています。毎年、社員全員を連れて、鹿児島指宿の酒蔵まで行き、実際に焼酎造りを行います。見学じゃなく、本当に焼酎を造るわけです。芋を洗ったり、発酵しているもろみを大きな木のへらを使って撹拌したり、蒸留の工程に立ち会ったり。汗をかきながら、焼酎ができていく工程に身を置き、最後には試飲までする。焼酎の美味しさを啓蒙することが会社のミッションにもなっているんですね。そういう観点から言いますと、社長の立場から、意識的にチェックしている数字は、全体の売り上げに対する焼酎比率なんです。焼酎比率が落ちてくると、中俣に連絡して『どうして?』と改善を呼びかけます」

中俣「中俣酒造の芋焼酎は食事をしながら楽しむ、いわゆる食中酒なんですね。私は毎日、店長らとともに築地に仕入れに行くのですが、のど黒やキンキ、大アサリなど、朝獲れの高級鮮魚ばかりを買い付けるんですね。鮮魚と焼酎がかけ算になっていくようなこだわりの素材の世界を追求しています」

── 社長がお持ちなのが『中俣酒造』の焼酎。中俣さんが抱えているのが『かしボックス』ですね。たしかに、高級鮮魚ばかり。焼酎も鮮魚も、素材主義なんですね。

中俣 「お客さまが席に着かれたらまずこの『かしボックス』を持っていってご説明します。お寿司屋さんでいうネタケースみたいなものですね。創業以来、築地通いを続けているんですが、そうすると、鮮魚のマーケットが少しずつ読めるようになってくる。のど黒という魚は、毎年ゆるやかに右肩上がりで売れている魚なんです。突発的な流行ではなく、じりじりと人気を博している魚です」

── 仕入れについては、中俣さんはじめ現場のみなさんに?

栗原「すべてお任せです。とくに中俣の目利き力は私なんて勝負になりませんから。中俣から、のど黒の人気上昇について話を聞いて、それならのど黒専門店もつくろうと。それでオープンさせたのが『のどぐろ専門 銀座 中俣』です。本部と現場とのそういういい連携を続けていきたいですね」

街に求められる店であるために、心がけていること。

栗原 秀輔

──  鹿児島県指宿市の中俣酒造で実際に焼酎造りを体験することで、スタッフのみなさんのモチベーションなどに変化はありますか?

中俣「私たちの店舗では、こぼれロックと呼んでいるのですが、お客さまの目の前でグラスに並々注ぎ入れて、溢れ出した焼酎が受け皿に溜まる。それぐらい量を入れるのですが、そのときに『これ、私が造った焼酎なんです!』って言葉が自然と出ますからね」

栗原 「ストーリーと体験を、仕入れた素材に付加価値として乗せているんだね。いいなぁ、現場はやはり楽しそうだね(笑)」

中俣 「忙しい夜は皿洗いでもしに、キッチンに入ってよ(笑)」

栗原「分かってる(笑)」

── 本日、どのような鮮魚を仕入れたのか。どこの漁港で水揚げされたとか。そういう情報の共有はどうしているのですか?

栗原 「(スマートフォンを出して)このように、中俣がLINEに写真入りで紹介してくれるんです。大間の本マグロや富山産氷見寒ブリ、長崎産野母んあじなど、これで各現場の料理長はじめ、私も同じタイミングで仕入れ状況を把握します。私も毎日、この仕入れの魚の写真を見るのが楽しみなくらいなんですよ」

中俣 「私たちは醤油ひとつでも指宿市で伝統的な製法で造っている醤油を刺身用として利用しています。素材についての追求は、やりすぎぐらいでちょうどいいと思っているんです」

栗原 「創業のころから想いだけは強く持ってやってきたつもりです。ただここ4~5年は『想いから表現へ』、という時代を迎えています。さきほどの『私が造った焼酎です』と言えるのも、そういう現場の想いを表現に変えたものだと思うんですね」

─メニューを拝見すると、高級魚といわれているのど黒がずいぶんとリーズナブルですね。栗原社長、こんな安くていいんですか?(笑)

栗原 「うーん……。お客さまの目線で言うならば『いい店だなぁ』ということになるでしょう。私たちは、築地のある中央区に集中して店を展開させているんですね。銀座や八丁堀といった街に求められる店でありたいと願っているんです。ザガットファンを増やしていきたい。そのためにも、ギリギリのラインでご提供できるよう努力しています」

中俣 「築地の卸のみなさんとは仲良くさせてもらっています。先日もお世話になっている卸の大将が来店してくれました。で、メニューを見て、刺身を食べて、焼酎をガブ飲みして帰って行ったんですけど、帰り際に小声で言うんです。『困ったものだ。ウチの自慢の鮮魚をこんな低価格で提供してるなら、おたくに対してしばらく値上げできないじゃないか』(笑)」

栗原 「そんな言葉をいただいたんだね。さすが築地の人は粋だなぁ」

人の成長をサポートしながら、会社として成長していく。

中俣 伸輔

── 仕入れたばかりののど黒や金目鯛をはじめ、北海道産極太アスパラなどの新鮮野菜に、キッチンスタッフのみなさんが高い集中力をもちながら仕込みをしているのが分かります。高級魚や新鮮食材ばかりを扱っているので、板前を目指している人にはとてもやりがいのある環境ではないでしょうか。

栗原「板前に限らず、料理人というのはいい食材に触れていたいという願望を強くもっています。そういう気持ちに対して会社としても応えていきたいですね。スタッフがいきいきと納得しながら働ける環境を整備するのは、経営者である私のミッションであると思っています。スキルアップについても積極的に行っているんだよね?」

中俣 「はい。大藤という総料理長がいまして、月に2回のペースで各現場に出向きスタッフのスキルアップに向けて指導をしています。具体的な包丁の扱いとかもやりますが、どうしたら人が育つのか、スキルアップしてもらうためにはどういうコミュニケーションを取った方がいいのか。そういう指導でスキルアップを行っているんです」

── 社長として、現場リーダーの中俣さんに対して、何かミッションを与えることもあるんですか?

栗原 「中俣はいわゆる天才肌なんですよ。何でもできるマルチプレイヤーなので、人に任せるより先に自分でやっちゃうクセがある。そろそろ、一歩引いて人を立てるというか、もっと人に責任を与えて、任せて、その人の成長をサポートする役回りに立って欲しいですね。会社としてもそういう時期に来ていると思うんです」

中俣 「むずかしいミッションですけど、はい社長、やってみせます!(笑)」

── 逆に現場に立つ中俣さんから社長に言っておきたいことはありますか?

中俣 「視点が広いのが社長のすごいところ。4つの現場を、まるで鳥の目線のように見つめているみたいなところがあります。ただ、何かを指摘するときの言い方が社外顧問かよ!(笑)ってくらい外過ぎる目線だったりする。冷静に現場を見つめてくれて、ありがたいんですけどね」

── マルチプレイヤーとして現場に立つ中俣さんと、引いた目線で組織を見つめる栗原社長。今日は楽しいキャッチボールを見せていただき、ありがとうございました。

中俣酒造 館 【取材店舗】中俣酒造 館

株式会社 ザガット ─ 店舗情報 ─

■中俣酒造 館
住所:東京都中央区八丁堀2-18-2
電話:03-5542-0816
■中俣酒造 茂助
住所:東京都中央区八丁堀4-9-9 八丁堀フロンティアビル1F
電話:03-6280-3524
■八丁堀 茂助
住所:東京都中央区八丁堀3-17-16
電話:03-3553-8551
■のどぐろ専門 銀座 中俣
住所:東京都中央区銀座4-10-12 銀座サマリアビルB1F
電話:03-6264-3229
  • 文 高木 正人
  • 写真 ボクダ茂

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