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第74回 希紡庵

第74回希紡庵

2015.3.19
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独立の前、酒蔵に入って酒づくりへの想いを体験した。

独立の前、酒蔵に入って酒づくりへの想いを体験した。

いつかは路面店に店を出したい、路面店で勝負したい、と思われる店主は少なくありません。でも、渡邊さんはその逆。あえて路面店を避け、ビルの6階という場所で営業をつづけています。

「ここならわざわざエレベーターで上がってこないと入れないですよね。日本酒のバー&グリルですので、本当に日本酒を愉しみたい人のための空間でありたいんです」

お連れの方も含め、日本酒を飲むことが求められます。一応生ビールもありますが、ノドを潤す一杯限定となっています。

料理も、日本酒のアテとして考えられたものばかり。生牡蠣、焼貝はこの店の名物メニューです。

常時80種、季節の日本酒が日々届きます。

入荷情報はツイッターやフェイスブックで発信。情報を聞きつけた日本酒ファンが夜な夜な来店しては、極上の一杯を愉しむ。そんなディープな世界がここにはあります。

渡邊元康さんは、テイスティングバーで6年、日本酒の担当として経験を積んできました。独立したのは31才。

その頃から、蔵見学や試飲会などに積極的に参加し、蔵元とのネットワークを築き、お付き合いをつづけるなか、日本酒の知識を深めてきました。

さらに、「希紡庵」をオープンさせる前には、栃木、静岡、岩手と3つの酒蔵に入って、酒づくりを体験!

「酒づくりの知識や行程を学ぶばかりではなく、つくり手の想いも知ったうえで、店をはじめたかったんですね。酒をつくるということは、朝も早いし、体力勝負。とても重労働だと痛感しました」

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実は知らないことばかりの日本酒。でも、愉しむことがいちばん!

実は知らないことばかりの日本酒。でも、愉しむことがいちばん!

カウンターのなかで、渡邊さんは静かに料理をつくり、盛りつけ、お酒を注ぎます。どちらかというと、無口。

でも、日本酒について何か尋ねれば、何倍返し!と言えるほど答えてくれます。

私が「辛口」という味わいについて話題を振ると……。

「辛口という言葉を、私は使いません。もともと米を原料にしているのが日本酒ですよね。お米を食べて辛いなんていう人いないでしょう(笑)。なのに、日本酒には辛いという概念があることになっているのが不思議なんです。さっぱりした味わいのことを辛口という人がいたり、旨みもありながらのキレのよさを辛口と感じている人がいたり、人によって辛口の定義もバラバラです」

日本酒度を示す「+10」みたいな数値も、どれだけ辛いかではなく、どれだけ甘くないか、を示す指標なんだそう。

普段飲んでいる、身近な存在の日本酒ですが、実は知らないことばかり(汗)

「でも、アタマでっかちで飲んでほしくないんですょ。疑問や質問にはきちんとお答えするようにしていますが、ご自身の感性で自由に日本酒を感じていただければ、それがいちばんうれしいです」

池袋の街全体でもっと日本酒を盛り上げていこうと、「酒ふくろう祭」というイベントも、仲間たちと企画・運営しています。

「次の開催では、8店舗が参加します。1つのお店に2~3蔵が入って、お客さまは参加券を購入して8店舗をキャッシュオンではしご酒できるというもの。蔵の方との交流も楽しく、年々盛り上がっています」

日本人にいちばん近い存在である日本酒をもっと広く深く!しかも、アタマでっかちにならずに愉しみたいものですネ。

スタイリッシュなカウンターは限定7席。日本酒について、渡邊さんに聞きたいことがあれば、しっかりと答えてくれます。

季節の日本酒がぎっしりと冷やされているストッカー。バランスよく取り揃えているのできっとお気に入りの一杯に出会えます。

西池袋公園の横にあるビルの6階。テーブル席では、春の夕暮れどき、満開の桜を見下ろしながらの至福のひとときに浸れます。

店舗情報
希紡庵(きぼうあん)
東京都豊島区西池袋3-31-15 ロイヤルプラザII 6F
tel.03-3987-7518
営:火~土17:00~23:00(L.O.22:30)
日15:00~22:00(L.O.21:30)
休:月曜日
交:各線池袋駅徒歩8分
<予告>次回のリレーキーワードは?
「希紡庵」探し当てた名店「シュヴァル・ド・ヒョータン(Cheval de Hyotan)」

日本酒に興味をもったきっかけは、実は漫画だったと語ってくれた渡邊さん。そこからのめり込んで、銘酒のバーまではじめてしまったわけですから運命とは分からないものですね。さて、次のお店をご紹介いただきました。「『ヒョータン』という不思議な名を冠したフレンチのお店です。食べ歩きが好きで、探し当てた名店です。サービスを担当されているご主人、川副さんの笑顔がとても素敵ですョ」。ありがとうございます。それでは次回も、池袋でお会いしましょう。

文:高木 正人
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