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Bricny Europe(ブリックニ― ヨーロッパ)

代表 佐伯 春彦

笑顔は万国共通。

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佐伯春彦 - Haruhiko Saeki -

1969年、東京都生まれ。16才からビアホールやイタリアンレストランで飲食の仕事を経験。1995年、26才の時に知り合いからの勤めで、オランダで和食を展開中の外食企業へ転職。1998年、同グループが運営する「串亭」店長就任。2003年、「串亭」の営業権を譲渡されると共に「Bricny Europe」を起業。

2011年6月掲載

ハードルよりモチベーションが勝っていた創業当時

 ドイツのデュッセルドルフにインマーマン通りというメインストリートがある。ここには、日本領事館をはじめ、日本企業の支社や日系ホテルなどが集っているため、日本食のレストランなども多く建ち並んでいる。  佐伯氏が代表を務めるブリックニーヨーロッパ社は、このインマーマン通りに本拠を置き、炭火焼居酒屋やカフェ、ラーメン店を展開中だ。

 「創業当初は、お客様の95%近くが日本人、残りがドイツ人や欧州の人たちでした。日本人のお客様のほとんどが企業の駐在員とそのご家族です。仕事帰りや週末に、慣れ親しんできた和酒で乾杯して、日本食を楽しみたいという強いニーズがあります。そして最近では、クチコミ等でドイツの人々にも伝わり、お客様の40%位がドイツ人や欧州の人々にまで広がってきました」

 各店舗共通のコンセプトは、日本に住む日本人がそのまま食べても美味しい日本食。現代の日本の食文化の味・盛り付け・内装・接客を通し、本物の日本を表現している。 「味噌、醤油といった調味料は現地でも充分に調達できます。ラーメン業態『匠』では北海道・札幌の製麺会社にオリジナル麺を製麺して頂き、直送してもらっています。そういう意味では、かなりリアルな日本食を提供していると言えるでしょう。おかげさまで、オランダやベルギー、ロンドンに駐在している日本人の方がクルマでわざわざ乗りつけてきたり、ドイツで活躍している日本人サッカー選手なども、ご来店いただいているんですよ(笑)。ありがたいことですよね」

 日本とドイツ、国の違いによる飲食店経営の難しさも、幾度となく乗り越えてきた。 「街の景観をとても大事にする国ですから、看板ひとつ取り付けるのも申請が必要です。さらに、衛生についても大変厳しく、抜き打ちで保健所がやってきて調査します。その場で営業停止に追い込まれる店もあるようです。創業当初は言葉が通じないというハードルもあって、本当に大変でした。ただ、ハードルの高さ以上に、いい店にしていくぞというモチベーションの方が勝っていたんですね。その気持ちを維持して、ここまでやってきました」

日本人にも、ドイツ人にも、リアルな日本を表現

 ドイツに滞在している日本人にとって、仕事帰りや週末などに日本食を楽しめるレストランがあるのは、とてもありがたい。日本人が経営し、多くの日本人スタッフが活躍しているレストランなら、なおさら安心だ。

 店に入った瞬間の「いらっしゃいませ!」の声。日本人の感性を活かしたインテリア。日本語のメニュー。炭火で焼き上げる串焼きや丁寧にダシを取ったラーメンなど、慣れ親しんできた味わい。さりげないサービスとおもてなしの笑顔。オープンキッチンの中では、日本人の料理長が料理をつくっているのが見える。そうした環境は、ここが異国の地であることを束の間、忘れることができるのだ。

 

一方、現地のドイツ人や欧州の人々の目線で見るとどうなるのか――。

 

元気のいい「いらっしゃいませ!」の日本語に異国情緒を感じ、オープンキッチンで料理をつくる日本人シェフの器用な仕事ぶりに目を奪われ、スタッフの笑顔に癒される。ドイツ語のメニューも用意されていて、言葉の通じるスタッフもいる。そして串焼き、ラーメンといった日本の食文化を楽しめる贅沢なひととき。

「私たちは、ごく自然体でストレートに日本の串焼き業態やラーメン業態、カフェ業態を展開しています。ドイツだからといって、何か特別なことをしているわけではないのです。でも、そこが日本のお客様には安心感を生み、ドイツ人のお客様から見ると、とても興味深く映るみたいですね。ドイツの人は日本の料理人たちの機敏な動きが面白いみたいでカウンター席に座ろうとします。我々が見ると当たり前の光景でも、例えば『はい、生ビール一丁!』『あいよ~、かしこまりましたぁ』というスタッフ間の掛け合いを、はじめてご来店されたドイツ人のご夫妻が不思議そうに見ていたりね(笑)。ドイツ語のトレーニングですか? 週に2回、現場にドイツ人の先生を招いて勉強会を開いています。電話やオーダーの取り方、接客時の対応まで、すぐに役立つリアルなドイツ語講座です。必要に迫られると、言葉なんて意外と早く覚えてしまうものですよ」

マーク・リュッテンさん

欧州中にラーメンという食文化を広めていく

 ドイツで起業して9年。今も日本とドイツを行き来しながらの多忙な日々が続いている。

「海外に出ると、今まで気付かなかった日本の良さが見えてきます。家族に支えられていたんだと、そのありがたさを感じたり、食文化の素晴らしさだって実感できます。特に、おもてなしの心をもつ日本の接客サービスは、世界一のレベルだと思います。また、国や文化の違いを越えて普遍的に通用するものも分かってきます。『いらっしゃいませ』と言って微笑むと、ドイツの人も言葉を越えて通じ合えるんですよ。笑顔は万国共通なんですね」

 

今、日本は内向きになっていると指摘されている。海外へ出て行く留学生や、海外での仕事にチャレンジしようとする若い世代が減っているからだ。しかし、飲食の世界は違う。外食企業の若い経営者たちの多くは、海外への出店を積極的に展開中だ。

「デュッセルドルフの新店『うまいもん』では、家庭や企業向けにデリバリーやテイクアウトも行っていこうと思っています。それからメインメニューとして、私たちのノウハウを最大限に活かした秘伝のスープを使って、鶏ラーメンにチャレンジします。『串亭』はしっかりと地盤固めをして、『匠 ─Takumi─』はフランチャイズ展開で広げていこうと計画中です。現在、オランダ、スペインへの出店が決まっています。欧州中にラーメンという食文化を広めていきたいのです。日本人の食に対する感性の鋭さ、伝統の和食を現地の食材でアレンジしてしまう器用さ、そして小さな気づかいやサービス、おもてなしの心...。私たちは、飲食を通して、ドイツと日本をつなぐ架け橋のような存在になれたらと、願っているのです。そして、良き日本文化を伝えたいという人たちに、どんどん夢とチャレンジ精神を持って海外進出をしてほしいですね」

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「Bricny Europe」
─ 店舗情報 ─

串亭

住 所:TImmermannstr.38 40210 Duesseldorf

電 話:0211-360935

カフェ リラックス

住 所:Immermannstr.28 40210 Duesseldorf

電 話:0211-1795653

匠 ─Takumi─

住 所:Immermannstr.28 40210 Duesseldorf

電 話:0211-1793308

匠 ─Takumi─ ミュンヘン

住 所:Hessstr.71 80978 Munchen

電 話:089-528599

うまいもん

住 所:Hansalley 224 Duesseldorf

現在5店舗展開中

文:高木正人 写真:ボクダ 茂

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