

2014年6月掲載
燻製料理の可能性にチャレンジ。
新宿三丁目といえば、エッジのきいた個人店が軒を連ねる激戦区。その中で、わずかオープン1年にして人気店となっているのが「燻煙」だ。
その名の通り、燻製料理の専門店であり、イタリアンや和食などのジャンルにとらわれずに食材の旨みを引き出しているメニューが満載である。
「燻製と出会ったのは、もう15年くらい前になります。それから飲食の経験を積みながら、いつか独立するときは燻製メインの店をつくろうと、独学で研究をつづけてきたんです」
厨房には燻製スモーカーを設置し、内装には桜の木を使ってデザインを施すなど、本格的に燻製料理を楽しめる空間づくりを行った。テーブルには野口氏が自作したメニューも。表紙に使う皮を用意して、針と糸でページを綴った。とても器用な経営者でもある。
一瞬だけ香りづけをする料理もあれば、10時間以上いぶすものもある。冷燻、温燻と、温度も微妙に使い分ける。
「自分が本当にうまいと思えるものをつくっています。下準備に手間がかかるうえに、コストパフォーマンスも求められます。チャレンジの毎日ですね。ただ、意外と若いカップルなどが多く、燻製っておいしい!って、魅力を発見していただいているのがすごくうれしいですね」
とにかく研究熱心。食材だけでなく、調味料やお酒まで燻製にしてしまうほどだ。しかし、そこには経営者としての視点がしっかりとある。
「集客できるメニューをつくるために、研究しているんですよ。思いつきのアイデアだけで、メニューに加えることはしません。今後、提供していこうと考えているのはピッツァなんですよ」
キッチンにこもるばかりではなく、ホールに出て接客もする。スタッフを育成するという大きなテーマにも直面している。
「スタッフが仕事場を好きになれる環境づくりをしていきたいですね。燻製の専門店という新しいジャンルをスタッフとともに切り開いていきたいですね。人の成長ありきで、店舗も増やしたいと計画中です」
引き出しの奥であたためていた「燻製」という技法を武器に、新しい経営者が羽ばたこうとしている。


東京都新宿区新宿3-6-12 藤堂ビル3F
電話/03-6380-4697
交通/地下鉄各線「新宿三丁目駅」徒歩1分
profile
野口 ひとし Hitoshi Noguchi1978年、福岡県生まれ。学生時代のアルバイトから飲食に興味をもつ。都内の飲食店の現場で、業態やジャンルを問わずに経験を積んできた。スタッフ育成にも積極的に関わりながら、店づくりを学ぶ。燻製料理は15年ほど前に出会い、独自に研究をつづけてきた。多彩な燻製メニューで客を掴み、オープン1年で人気店となっている。