

2017年8月掲載
人生をかけて、パン作りのすべてを伝えたい
東京・谷中は、閑静な住宅地に昔ながらの商店や洒落たカフェなどが並ぶ人気の街だ。今年6月にオープンしたばかりのベイクショップ「サクセション」もまた、駅からやや離れているにも関わらず、客足が絶えない。そしてここは、単なるベイクショップではない。オーナーの岩本進氏が、先人達から受け継いできたパン作りの技術や、自身の経験を次の世代へ継承(サクセション)していく為の拠点として誕生した場所なのだ。
岩本氏は、これまでパン業界で研鑽を重ねてきた。その腕が認められ、自身の店舗経営のほかにも新店舗の立ち上げに携わったり、講師として招かれ技術を教えたりと、多忙な日々を過ごしていた。
「パン作りの面白さは、工夫しだいで結果が大きく変わること。だから知識や技術にゴールがないんです。どれだけいいものを作れるか、ひたすら追求してきました」
そんなある日、持病の心臓病が悪化し、倒れた。心臓は一時停止し、岩本氏は救命措置で一命をとりとめたという。
「その経験から、僕は『生まれてきた意味』を考えるようになりました。やり残しや、悔いのないように生きたい……そう考えたとき、自分が今まで培ってきたパン作りの技術を、自分だけにとどめておいてはいけないんじゃないかと思ったんです」
その後、体は順調に回復し、趣味のトレッキングを楽しめるまでになった。そして岩本氏は自身の技術を伝えるため、東京に店舗を構えることを決意。専門学校で教えることを選ばなかったのは、より多くのことを後進に伝えたいからだ。
「実体験で学んだことは、教科書には書いていないことばかりです。現場じゃないと教えられないことも含めて伝えたかったので、店舗という形を選びました」
「サクセション」では、パンや菓子作りの技術を磨きながら、経営も学べる。
「やりたいことやアイデアはどんどん言ってほしいし、それを実現するチャンスをたくさん作りたいと思っています。ただ、技術が追いつかなければ、できないこともある。僕もたくさん悔しい思いをしたし、へこたれてきました(笑)。でも、大切なのは立ち直ること。へこたれても立ち直れる人、そして将来的に店を出したい人にとって、ここはいい場所になると思います」


東京都台東区谷中2-5-19 1F
電話/090-5793-1401
交通/地下鉄千代田線「千駄木駅」1番出口より徒歩8分・各線「日暮里駅」より徒歩10分
https://www.facebook.com/Succession.YANAKA/?fref=ts
profile
岩本 進 Susumu Iwamoto1979年、大阪府生まれ。大学卒業後、東京で大手の製パン会社に就職し、パンと洋菓子作りをさらに学ぶため神戸に移住。その後茨城県つくばみらい市で独立し、笠間市でパン屋立ち上げに参加、経営にも携わる。2017年、東京・谷中にベイクショップ「Succession(サクセション)」をオープン。