
※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。
「解雇通告と同時に支払われなかった解雇予告手当について」

Q.
5月15日、「今日限りでクビだ!」と言われて解雇されました。その後、解雇予告手当という制度があることを知り、支払ってくれるように請求しました。すると、「じゃあ給料日の5月25日に払ってやる」と言われました。これで法律的に問題はないのですか。
【24才 女性】

A.
労働基準法20条において、「解雇をする場合、使用者は30日以上前に解雇予告をするか平均賃金30日分以上の解雇予告手当を支払わなければならない」と定められています。この解雇予告手当の支払時期は、行政解釈によると「解雇の申渡しと同時に支払うべきである」とされています。それでは、解雇予告手当を支払わずに即時解雇した場合はどうなるでしょう。学説の中には、解雇そのものが無効になる説、労働者が解雇無効の主張と予告手当の請求との選択ができる説、などの見解があります。しかし、判例では「使用者が即時解雇に固執しない限り、解雇後30日が経過した時点または予告手当を支払った時点で解雇の効果が発生する」としています。したがって、5月25日に解雇予告手当が支払われれば、その時点で解雇が成立することになり、それまでは労働者としての地位が存在することになります(この場合、解雇予告手当の額は、5月16日から25日までの10日分減額できるので、平均賃金20日分となる)。
それでは、解雇成立まで就労しなかった10日間の賃金はどうなるでしょう。使用者の責に帰すべき事由による休業なので、労働基準法26条にもとづき、休業手当として平均賃金60%の支払いだけが必要との考え方もあります。しかし、これではまともに解雇予告手当を支払うよりも会社が得することになり、制度の無知を装って脱法的に行われる恐れがあります。ここは、民法536条2項にもとづき、全額の賃金を請求できると考えるべきでしょう。
それでは、解雇成立まで就労しなかった10日間の賃金はどうなるでしょう。使用者の責に帰すべき事由による休業なので、労働基準法26条にもとづき、休業手当として平均賃金60%の支払いだけが必要との考え方もあります。しかし、これではまともに解雇予告手当を支払うよりも会社が得することになり、制度の無知を装って脱法的に行われる恐れがあります。ここは、民法536条2項にもとづき、全額の賃金を請求できると考えるべきでしょう。
グルメキャリー123号掲載

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特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE
昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。
ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201
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