
※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。
「制服代使用料を給与天引きすることは違法か」

Q.
私の勤めるお店では、制服の使用料として、毎月500円が給料から天引きされます。仕事で必要なものをこっちが負担するのはおかしくないですか。
【24才 女性】

A.
労働基準法24条に、「賃金支払の原則」の一つとして、「全額払いの原則」が定められています。給料の支払時に勝手に天引きしてはならず、全額を支払わなければいけないということです。例外として天引きが許されるのは、(1)社会保険料や税金など法令に定めがある場合と(2)労働者の代表と労使協定を締結した場合の2つのケースです。したがって、事前に労使協定があるのなら、制服代の徴収も24条違反ではないことになります。
次に、労働基準法15条に、労働契約を結ぶ際、使用者が労働者に明示しなければいけない労働条件の一つとして、「労働者に負担させる食費、作業用品などに関する事項」が定められています。採用時にこの明示をしていたのなら、15条違反でもないことになります。
以上のことから、これらの問題をクリアしていれば、法条文上は違法ではないことになります(もっとも、その控除名目に相当性があるかどうかは別問題として残りますが)。労働条件は、労働者と使用者が対等の立場で決定するものです。採用時に明示された労働条件に納得できなければ、労働契約を締結しなければいいだけの話です。採用時に明示せずに、後出しジャンケン的に労働条件を追加してくるのは許されないということです。
繰り返しになりますが、給料から”勝手に“天引きすることは違法です。ただし、一定の要件をクリアすれば、天引きも違法ではなくなる、という順番です。しかし、お店の側が、違法でなければ得をしていると思っているなら、それは大間違いです。そんなに費用負担をしたくないなら、最初からその分を加味した給与額を設定すればいいのです。「いったん支給した分から、これだけ控除します」なんて給与明細を見せられれば、働く側からしてみれば「なんてセコいお店なんだろう」と思われて当然でしょう。そんな感情をもった従業員が、どれだけお店のために貢献し、どれだけお客様のことを考えて働くか、一度でも想像してみたことがあるのでしょうか。お店が発展するための労務管理というものは、違法でなければそれでいいというものではありません。
次に、労働基準法15条に、労働契約を結ぶ際、使用者が労働者に明示しなければいけない労働条件の一つとして、「労働者に負担させる食費、作業用品などに関する事項」が定められています。採用時にこの明示をしていたのなら、15条違反でもないことになります。
以上のことから、これらの問題をクリアしていれば、法条文上は違法ではないことになります(もっとも、その控除名目に相当性があるかどうかは別問題として残りますが)。労働条件は、労働者と使用者が対等の立場で決定するものです。採用時に明示された労働条件に納得できなければ、労働契約を締結しなければいいだけの話です。採用時に明示せずに、後出しジャンケン的に労働条件を追加してくるのは許されないということです。
繰り返しになりますが、給料から”勝手に“天引きすることは違法です。ただし、一定の要件をクリアすれば、天引きも違法ではなくなる、という順番です。しかし、お店の側が、違法でなければ得をしていると思っているなら、それは大間違いです。そんなに費用負担をしたくないなら、最初からその分を加味した給与額を設定すればいいのです。「いったん支給した分から、これだけ控除します」なんて給与明細を見せられれば、働く側からしてみれば「なんてセコいお店なんだろう」と思われて当然でしょう。そんな感情をもった従業員が、どれだけお店のために貢献し、どれだけお客様のことを考えて働くか、一度でも想像してみたことがあるのでしょうか。お店が発展するための労務管理というものは、違法でなければそれでいいというものではありません。
グルメキャリー124号掲載
飲食店オーナー・経営者のみなさまへ


特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE
昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。
ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201
業務案内:給与計算、労働・社会保険の手続き代行、就業規則の診断・作成 店長・管理職対象労務研修の実施、人事・労務相談