
※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。
「過去にさかのぼって賃金減額が許されるか」

Q.
お店の経営状況がよくないことを理由に、就業規則(賃金規程)が改定され、今月から従業員の給料が一律10%減額されることとなりました。その説明を受けたのは今月の20日です。減額自体はしょうがないのかもしれません。でも、今月の1日にさかのぼって減額されるのは、納得がいきません。
【35才 男性】

A.
今月の1日から19日まで働いた分の対価としての賃金を受ける権利は、すでに発生しているものです。それを減額するということは、あなたから見ると、すでに発生している権利を放棄することです。賃金債権の放棄は、労働者の同意があれば一応は可能となっています。しかし、労働基準法には、賃金全額払いの原則という強力な保護規定があります(労基法24条1項)。この原則に反しないためには、労働者の同意が自由な意思にもとづいてなされたものであると認められるだけの合理的な理由が客観的に存在していることが必要です。本当に自由な意思にもとづいていたかどうかは、非常に厳格に判断されます。
また、仮にその就業規則の変更が有効であったとしても、裁判例によると、さかのぼって適用して、すでに発生している賃金債権を変更することは許されないことになっています。
以上を踏まえて考えると、さかのぼっての減額にあなたは本心から納得しているわけでもありませんし、就業規則のさかのぼり適用も不可能であることから、1日から19日までの減額については認められません。
また、仮にその就業規則の変更が有効であったとしても、裁判例によると、さかのぼって適用して、すでに発生している賃金債権を変更することは許されないことになっています。
以上を踏まえて考えると、さかのぼっての減額にあなたは本心から納得しているわけでもありませんし、就業規則のさかのぼり適用も不可能であることから、1日から19日までの減額については認められません。
グルメキャリー164号掲載

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特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE
昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。
ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201
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