
※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。
「お店のミスで休業となった場合の賃金」

Q.
飲食店でアルバイトをしています。先日、出勤したところ、お店のミスで私のユニフォームがクリーニングから戻ってきていませんでした。結局その日は仕事をまったくせずに帰ることになりました。しかも、その日は給料をまったくもらえないとのことです。確か、お店の都合で休みになった場合、60%の手当がもらえる法律があると聞いたのですが。
【23才 女性】

A.
60%どころか、ご質問のケースでは、その日の賃金100%を請求できる可能性があります。
労働基準法では、使用者(お店の側)の責めに帰すべき事由による休業の場合、労働者に対して平均賃金60%以上の休業手当を支払わなければならないとされています(26条)。つまり、「お店の責任」で休みとなった場合、お店は平均賃金60%の休業手当を支払う義務があるということです。
一方、民法によると、債権者(労働を受け取る権利のあるお店の側)の責めに帰すべき事由によって債務(労働を提供する義務)を履行することができなくなったときは、債務者(労働者)は反対給付(賃金)を受ける権利を失わない、とあります(536条2項)。働くつもりがあってお店まで来たのに、お店の側が「お店の責任」で労働を受け取ることを拒否した場合には、賃金の全額を受け取れますよということです。
問題は、同じように見える「お店の責任」が、労働基準法と民法ではどう違うのかです。これについては、民法より労働基準法の方が、お店の責任とされる範囲が広いものであり、使用者側に起因する経営、管理上の障害が含まれると解釈されています。具体的には、経営難による自宅待機や、親会社からの資金資材の供給停止による下請け子会社の休業などが、『民法では「お店の責任」にならないが、労働基準法では「お店の責任」となる』ケースです。労働基準法で使用者の責任ではないとされるのは、不可抗力(地震・台風といった天災事変など)の場合に限られます。
ご質問のケースは、あなたに何の落ち度もなく、お店のミスによる休業ですので、本来働いたらもらえるはずだった賃金100%を請求できると考えられます。
労働基準法では、使用者(お店の側)の責めに帰すべき事由による休業の場合、労働者に対して平均賃金60%以上の休業手当を支払わなければならないとされています(26条)。つまり、「お店の責任」で休みとなった場合、お店は平均賃金60%の休業手当を支払う義務があるということです。
一方、民法によると、債権者(労働を受け取る権利のあるお店の側)の責めに帰すべき事由によって債務(労働を提供する義務)を履行することができなくなったときは、債務者(労働者)は反対給付(賃金)を受ける権利を失わない、とあります(536条2項)。働くつもりがあってお店まで来たのに、お店の側が「お店の責任」で労働を受け取ることを拒否した場合には、賃金の全額を受け取れますよということです。
問題は、同じように見える「お店の責任」が、労働基準法と民法ではどう違うのかです。これについては、民法より労働基準法の方が、お店の責任とされる範囲が広いものであり、使用者側に起因する経営、管理上の障害が含まれると解釈されています。具体的には、経営難による自宅待機や、親会社からの資金資材の供給停止による下請け子会社の休業などが、『民法では「お店の責任」にならないが、労働基準法では「お店の責任」となる』ケースです。労働基準法で使用者の責任ではないとされるのは、不可抗力(地震・台風といった天災事変など)の場合に限られます。
ご質問のケースは、あなたに何の落ち度もなく、お店のミスによる休業ですので、本来働いたらもらえるはずだった賃金100%を請求できると考えられます。
グルメキャリー237号掲載

飲食店オーナー・経営者のみなさまへ


特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE
昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。
ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201
業務案内:給与計算、労働・社会保険の手続き代行、就業規則の診断・作成 店長・管理職対象労務研修の実施、人事・労務相談