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フードサービス業界の労務相談

※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。

「賞与支給直後の退職者に、賞与全額返還させることは許されるか」

質問1

Q.

  転職のため、今勤めているお店を退職しようと考えています。どうせ辞めるなら、夏の賞与をもらってから辞めようと思っていました。ところが、お店の就業規則に「賞与をもらってから3ヶ月以内に退職した場合、賞与を全額返還しなければならない」と書かれていることを知りました。このような規定は許されるのですか。 
【33才 男性】
答え

A.

  結論としては、このような規定は許されません。
 まず、賞与の法的性質を考えてみましょう。そもそも、賞与は法律上、お店に対して支給が義務づけられているものではありません。賞与を支給するのもしないのも、どんな対象者にどんな計算方法でいつ支給するかも自由です。ただし、就業規則(賃金規程)に支給方法等を定めた場合、労働契約の内容となるので、お店はその規定に従わなければなりません。また、賞与は労働基準法11条に定義される「賃金」にあたりますので、同法の賃金に関する規制が、一部の例外を除き適用されます。
 よく問題になるのは、賞与支給日前に退職していた場合には、賞与を支給しないという規定(いわゆる「支給日在籍要件」)が認められるかどうかについてです。最高裁をはじめ裁判例によると、賞与には将来の労働に対する期待を込めたり、意欲向上を促したりの意味があるとして、支給日在籍要件を有効と認める傾向があります。また、賞与支給直後に退職を予定している者に対して、2割の減額査定を認めた裁判例もあります。
 では、ご質問のように、賞与を受け取ってすぐ退職した場合に、全額を返還しなければならないという規定はどうでしょうか。この規定は、一定の場合の退職に対し、あらかじめ違約金を定めていることになります。そうすると、労働者の退職の自由を奪い、不当に拘束することになり、賠償予定の禁止(労働基準法16条)に抵触します。労働基準法が制定される前には、労働者が強制的に労働させられたり、奴隷のように扱われたりすることが横行していて、莫大な違約金を支払わなければ退職できない契約をさせられることがありました。このような「辞めたくても辞められない」ような状態を防ぐために設けられたのが、「賠償予定の禁止」です。
 以上のとおり、賞与の支給日在籍要件はまだしも、賞与の支給後にまで退職をためらわすような就業規則の規定は許されません。
グルメキャリー239号掲載

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久野先生

特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE

昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。

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