
※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。
「退職前に年次有給休暇を消化中、賞与の支給日があってももらえないのか」

Q.
退職するにあたり、有給休暇が10日ほど残っていたので、実際の最終出勤日の後、有給休暇を消化したところで退職日とすることで、お店と話し合いがつきました。ところが、この休暇を消化中に、賞与の支給日があったのに、私はもらうことができませんでした。店長には、「事実上すでに退職した者に、賞与なんか出すわけないだろう!」と言われました。これは正しいのでしょうか。
【27才 女性】

A.
お店の就業規則がどのような規定になっているかにもよりますが、お店の言い分が通る可能性は低いと思われます。
多くの企業では、就業規則において、賞与に関する「支給日在籍要件」を定めています。これは、賞与の査定期間に在籍していたとしても、支給日に退職していた場合には、賞与を支給しないとする社内ルールです。賞与は、過去の労働に対する報償であると同時に、通常の賃金とは異なり、将来の労働に対する意欲向上策としての意味が込められているためです。最高裁判例を始め、多くの裁判例で支給日在籍要件は有効と認められています。
それでは、退職を間近に控えた者に対して、まったく賞与を支給しないという規定は認められるでしょうか。ある裁判例では、退職予定者に対する賞与について、将来の期待分にあたる2割を減額して査定することを認めています。ただ、ご質問のような、年次有給休暇(年休)を消化中に支給日があるケースを扱った裁判例は見当たらないようです。仮に、支給日在籍要件が定めてあったとしても、年休消化中でも在籍していることに変わりありませんので、まったく支給しないということは許されないでしょう。退職予定者への減額査定を定めていれば、それを適用することは可能ですが、お店の側ができるのは、そこまでとなるでしょう
多くの企業では、就業規則において、賞与に関する「支給日在籍要件」を定めています。これは、賞与の査定期間に在籍していたとしても、支給日に退職していた場合には、賞与を支給しないとする社内ルールです。賞与は、過去の労働に対する報償であると同時に、通常の賃金とは異なり、将来の労働に対する意欲向上策としての意味が込められているためです。最高裁判例を始め、多くの裁判例で支給日在籍要件は有効と認められています。
それでは、退職を間近に控えた者に対して、まったく賞与を支給しないという規定は認められるでしょうか。ある裁判例では、退職予定者に対する賞与について、将来の期待分にあたる2割を減額して査定することを認めています。ただ、ご質問のような、年次有給休暇(年休)を消化中に支給日があるケースを扱った裁判例は見当たらないようです。仮に、支給日在籍要件が定めてあったとしても、年休消化中でも在籍していることに変わりありませんので、まったく支給しないということは許されないでしょう。退職予定者への減額査定を定めていれば、それを適用することは可能ですが、お店の側ができるのは、そこまでとなるでしょう
グルメキャリー268号掲載
飲食店オーナー・経営者のみなさまへ


特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE
昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。
ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201
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