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フードサービス業界の労務相談

※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。

「降格により賃金が低下する場合、低下する額に規制は無いか」

質問1

Q.

  仕事でミスが重なり、給与の査定において降格となり、賃金表のランクが下がりました。その結果、月給の額が20%低くなりました。降格により賃金が下がる場合、いくらまでという制限はないのですか。
【30才 女性】
答え

A.

   まず、ご質問の中にある「降格」という用語の意味を押さえておきましょう。人事労務の世界において、降格と呼ばれるものには3種類あります。
 1つ目は、課長から係長という具合に、役職や職位を引き下げるもので、「昇進」の反対にあたります。日本の企業社会においては、誰を、どの役職・職位に就けるかというのは、企業に与えられた人事権の行使の問題であり、裁量的行為とされています。人事権の行使が、権利の濫用にあたらない限りは、企業側に広い裁量が認められています。この降格に伴い、役職手当等の賃金が低下することになるとしても、何%までとか何円までとか、低下する金額に法的な制限はありません。
 2つ目は、賃金制度の一つである「職能資格制度」において、職能等級を引き下げるもので、「昇格」の反対にあたります。(ご質問のケースは、こちらに該当するかと思います)一度格付けされた等級を引き下げるためには、労働契約上の根拠として、資格等級の見直しによる降格・降給の可能性が予定され、企業側にその権限があることが、就業規則に定められていることが必要です。また、就業規則に契約上の根拠が定められていても、人事考課が適正に行われていない等の事情があれば、権利の濫用として無効となる場合もあります。こちらの降格についても、賃金の低下額に法的規制はありません。
 3つ目は、懲戒処分としての「降格」です。懲戒処分が有効となるためには、就業規則にどんな行為をしたときに、どんな種類の処分を行うか定められていなければなりません。また、行為と処分のバランスが取れていない等、相当性を欠く処分は、懲戒権の濫用となり無効となることもあります。そして、この降格についても、賃金の低下額に制限はありません。
 以上のとおり、いずれの「降格」においても、これから働く分の対価として発生する賃金については、引き下げられる額に法律上の規制はありません。
 ところで、労働基準法には、「減給の制裁」に対する規制が定められています。これは、懲戒処分として、減給を行う場合、1つの事案に対して平均賃金一日分の2分の1を超え、総額が一賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならない、という制限です(労基法91条)。注意が必要なのは、ここでいう「減給」とは、すでに働いて発生した賃金債権から差っ引くことです。「降格」によりこれから働く分の賃金が低下するのとは、別の問題です。
グルメキャリー272号掲載
イラスト

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久野先生

特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE

昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。

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