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フードサービス業界の労務相談

※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。

「割増賃金と勤怠控除で使われる時間単価が異なるのは許されるか」

質問1

Q.

 最近、給与明細書を見ていて気づいたのですが、残業手当等の割増賃金の計算に使われている時間単価と、遅刻や欠勤での控除計算に使われる時間単価が、異なっているようなのです。具体的には、割増賃金の時間単価には家族手当が含まれていないのに、勤怠控除の方には含まれているようです。つまり、同じ1時間でも、割増賃金の単価の方よりも勤怠控除の単価の方が高いので、なんだか納得いきません。この計算は、法的に許されるのでしょうか?
【36才 男性】
答え

A.

 結論としては、そのような計算ルールも、法律違反とまではいえません。
 まず、割増賃金に用いる時間単価についてご説明しましょう。労働基準法では、法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えた労働、法定休日(1週1日または4週4日)の労働、深夜時間帯(22時から翌5時)の労働に対して、『通常の労働時間に支払われる賃金』を一定の割増率で計算した割増賃金を支払うことが、義務づけられています。ここでいう『通常の労働時間に支払われる賃金』とは、月給制の場合、月給額を、1ヶ月平均所定労働時間で割った額と定められています(労基則19条)。さらに、この計算で分子に来る「月給額」からは、次の7つの賃金に限り、除外して算定することが認められています(労基則21条)。(1)家族手当(2)通勤手当(3)別居手当(4)子女教育手当(5)住宅手当(6)臨時に支払われた賃金(結婚手当等)(7)1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)。ご質問のように、割増賃金に用いる時間単価の算出の際、家族手当を除くことは、問題ありません。一方、ここで挙げた7つ以外の手当(例えば、役職手当等)を除外するのは、たとえ就業規則等で会社独自のルールとして明文化していても、明らかな労働基準法違反となります。
 次に、遅刻・早退・欠勤等の勤怠控除に用いる時間単価についてです。実は、意外に思われるかもしれませんが、勤怠控除の計算方法については、労働基準法等の法令には、一切定められていません。もちろん、「1時間遅刻につき5万円を差っ引く」といったルールは、合理性がないものとして認められません。そうではなく、合理的な計算方法を就業規則等に定めている限りは、計算方法が法律に規定されていないのですから、法律違反になることはありません。家族手当についても、「家族手当の支給額は扶養家族の人数で決定するが、1ヶ月の所定労働時間を不足なく勤務して初めてその手当満額が支給されるものである」との理念で支給しているのなら、1時間遅刻したら、それに比例して支給を受ける権利が減らされるのというのも、合理的な考え方と言えるでしょう。
 ただ、一般的には、多くの企業において、割増賃金も勤怠控除も、同じ時間単価を使っているのではないでしょうか。従業員一人につき、時間単価を複数管理するのは事務的に煩雑になります。それに、例えば「遅刻した日に残業した」場合等には、遅刻と残業で時間単価が異なると、違和感が生じることもあるでしょう。
 なお、平均賃金(労基法12条)に関する行政通達の中においてですが、「欠勤期間に対する賃金の控除額は、労基則19条に定める方法によって計算した金額(つまり、割増賃金に用いる時間単価)を超えることを得ない」と触れられています(昭27・5・10基収6054号)。この行政解釈に従うなら、勤怠控除の時間単価は、割増賃金の時間単価を超えてはならないことになります。
 一方、ストライキ期間中の賃金カットに関する最高裁判決では、労基法が家族手当を割増賃金算定の基礎から除外すべきものと定めた趣旨は、「労働者の個人的事情にもとづいて支給される性格をもつ家族手当のようなものが、割増賃金の算定基礎に含まれるのは適切ではないため」とした上で、「ストライキの場合における家族手当のカットを直ちに違法とする趣旨までを含むものではない」と示しました(三菱重工長崎造船所事件・最2小判昭56・9・28)。
グルメキャリー285号掲載

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久野先生

特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE

昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。

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