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フードサービス業界の労務相談

※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。

「労使協定を締結しているが、使途不明な賃金控除」

質問1

Q.

 私の勤めるお店では、「管理費」という名目で、毎月の給料から5千円が天引きされています。しかし、その管理費は、何のために使われているか分かりません。店長は、「労使協定を締結しているし、採用時の契約書にも天引きについて明記しているんだから、法律上なんの問題もないんだ」と言っていますが、本当でしょうか。
【25才 男性】
答え

A.

 確かに、形式上は、賃金からの天引きをするための要件を満たしています。しかし、使い道が不明瞭な名目での天引きは認められません。
 労働基準法には、「賃金支払いの5原則」と呼ばれる原則が定められています(24条)。この5つの中に、「全額払いの原則」があります。「賃金は全額を支払わなければならない」というものです。当たり前のことのようですが、労働者にとって生活の糧である「賃金」について、使用者(お店の側)は、1円たりとも手をつけてはならない、ピンハネは許されない、という重要な規定です。
 ただし、全額払いの原則には、2つの例外があります。
 1つ目は、法令に別段の定めがある場合です。所得税や社会保険料を、労働者の同意無しに天引きできるのは、この例外があるからです。
 2つ目は、従業員代表者と使用者が、賃金控除に関する労使協定を締結した場合です。借上げ社宅の家賃や、社内旅行の積立金を天引きするためには、この労使協定の締結が必要です。
 さて、ご質問のケースですが、法令に定めのない「管理費」を、労使協定を締結した上で天引きしていたことは、形式的には、労働基準法違反にならないことになります。しかし、裁判例の中には、中国人技能実習生から使途不明の「管理費」を天引きしていた事案について、労使協定を締結していても、控除の使途が不明確であることを理由に、労基法違反と判断したものがあります。また、行政通達でも、賃金控除協定を締結していたとしても、そもそも使途が不明なものや、控除額の合計が実際に必要な費用との均衡を欠くもの等、事理明白でないものを控除することはできないと示されています。
 以上のとおり、たとえ賃金控除に関する労使協定を締結していても、使途が不明なものを天引きするのは、労働基準法違反となります。
グルメキャリー286号掲載

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久野先生

特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE

昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。

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