
※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。
「残業代が未払いの場合、付加金を請求すれば倍額をもらえるか」

Q.
私の勤めるお店では、残業代が一切払われていません。残業代が未払いとなっている場合、お店に対して未払い額の2倍を請求できると聞いたのですが、本当でしょうか。
【25才 男性】

A.
おそらく、労働基準法の「付加金」制度についてお聞きになったのでしょう。しかし、未払い残業代があったからといって、そうそうかんたんに倍額を払ってもらえるものではありません。
残業代とは、労働基準法で定められた労働時間の上限(1日8時間、1週40時間)を超えて働いた時間に対する割増賃金です。割増賃金は、残業だけでなく、深夜時間帯(夜10時から翌朝5時)や法定休日(1週1日または4週4日)に働いた場合にも発生します。そして、割増賃金のほかに、解雇予告手当、休業手当、年次有給休暇取得日に対する賃金を使用者(お店の側)が支払わなかった場合、裁判所は、労働者が請求することにより、未払い額と同一額の「付加金」の支払を命ずることができます(労基法114条)。労働基準法で義務づけられた割増賃金等を支払わない違法行為に対する一種の「制裁」としての性質と、割増賃金等の支払を確保することが、付加金制度の趣旨です。あなたが聞いた、「未払い額の2倍」とは、未払い分と付加金を足した額のことでしょう。しかし、付加金は未払い残業代があれば当然に支払われるものではなく、いくつかのポイントがあります。
まず、付加金は、裁判所が判決において支払を命じるものとなっています。したがって、個人で交渉して残業代を支払わせる場合や、労働審判、調停、あっせんといった裁判外の制度を利用した場合には、付加金を払わせることはできません。また、訴訟を起こした場合でも、判決に至る前に和解が成立した場合も、付加金は取れません。
次に、残業代等の支払を確保するのが法の趣旨の一つなのですから、裁判所の命令があるまでに、未払金の支払を完了した場合には、裁判所は付加金の支払を命じることはできません。
さらに、仮に裁判によって未払い残業代の存在が認められた場合においても、必ずしも裁判官が未払い額と同一額の付加金の支払を命ずるとは限りません。条文で「命ずることができる」となっているとおり、裁判所は裁量により支払額を決定することができるのです。使用者による法違反の程度・態様、労働者の受けた不利益の性質・内容、違反に至る経緯や使用者の対応等の諸事情に照らして、裁判所は付加金の支払が相当であるか否かを判断することになっています。要は、使用者の違反行為が悪質とまでは言えない場合、裁判所は、付加金の額を減額したり、まったく支払を命じなかったりすることができるということです。
以上のとおり、「未払い残業代があれば、かんたんに倍額をもらえる」というものではありません。
残業代とは、労働基準法で定められた労働時間の上限(1日8時間、1週40時間)を超えて働いた時間に対する割増賃金です。割増賃金は、残業だけでなく、深夜時間帯(夜10時から翌朝5時)や法定休日(1週1日または4週4日)に働いた場合にも発生します。そして、割増賃金のほかに、解雇予告手当、休業手当、年次有給休暇取得日に対する賃金を使用者(お店の側)が支払わなかった場合、裁判所は、労働者が請求することにより、未払い額と同一額の「付加金」の支払を命ずることができます(労基法114条)。労働基準法で義務づけられた割増賃金等を支払わない違法行為に対する一種の「制裁」としての性質と、割増賃金等の支払を確保することが、付加金制度の趣旨です。あなたが聞いた、「未払い額の2倍」とは、未払い分と付加金を足した額のことでしょう。しかし、付加金は未払い残業代があれば当然に支払われるものではなく、いくつかのポイントがあります。
まず、付加金は、裁判所が判決において支払を命じるものとなっています。したがって、個人で交渉して残業代を支払わせる場合や、労働審判、調停、あっせんといった裁判外の制度を利用した場合には、付加金を払わせることはできません。また、訴訟を起こした場合でも、判決に至る前に和解が成立した場合も、付加金は取れません。
次に、残業代等の支払を確保するのが法の趣旨の一つなのですから、裁判所の命令があるまでに、未払金の支払を完了した場合には、裁判所は付加金の支払を命じることはできません。
さらに、仮に裁判によって未払い残業代の存在が認められた場合においても、必ずしも裁判官が未払い額と同一額の付加金の支払を命ずるとは限りません。条文で「命ずることができる」となっているとおり、裁判所は裁量により支払額を決定することができるのです。使用者による法違反の程度・態様、労働者の受けた不利益の性質・内容、違反に至る経緯や使用者の対応等の諸事情に照らして、裁判所は付加金の支払が相当であるか否かを判断することになっています。要は、使用者の違反行為が悪質とまでは言えない場合、裁判所は、付加金の額を減額したり、まったく支払を命じなかったりすることができるということです。
以上のとおり、「未払い残業代があれば、かんたんに倍額をもらえる」というものではありません。

飲食店オーナーの方へ
残業代は、残業をさせたら、もともと払わなければならないものです。もし裁判を起こされ、裁判所に悪質と判断されれば、払わなくてもいい付加金まで払うはめになってしまいます。それなら初めからキチンと残業代を払っておいた方がいい、というのが正しい経営判断でしょう。
グルメキャリー296号掲載

飲食店オーナー・経営者のみなさまへ


特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE
昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。
ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201
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