
※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。
「タバコを吸っている一服の時間は、労働時間と認められるか」

Q.
私の勤めているお店では、休憩時間以外でも、各自が仕事の段取りをつけつつ、調理場の隅で、タバコを吸って一服することが認められていました。ところが、先日、本社からの通達により、休憩時間以外の喫煙は一切禁止となりました。理由としては、喫煙中の不就労時間について、非喫煙者との不公平感を是正するためなどが挙げられていました。こんなルールを押しつけることは許されるのですか。そもそもタバコを吸っている時間は、すぐに仕事に戻れる状態なんだから、労働時間ではないのですか。
【35才 男性】

A.
昨今話題になっている職場における喫煙問題は、「職場環境(受動喫煙)の問題」「従業員の健康管理(健康増進)の問題」「喫煙中の労働していない時間の問題」、に大別することができます。とりわけ、喫煙中の時間については、タバコを吸わない人の増加に伴い、不公平に感じている声も増えています。それでは、そもそも喫煙時間は労働時間として認められるのでしょうか。
世の中には、「喫煙中は手待ち時間であるから、労働時間である」と考えている人がいるようです。しかし、この考え方は間違いでしょう。「手待ち時間」とは、飲食店や小売店の店員が、営業中お客様のいない時間に来店を待っている状態や、昼休みを与えられていても電話が掛かってきたら取るように指示されている状態のように、「一見、仕事をしていないように見えるけど、何かあればすぐに対応しなければいけない時間」をいいます。法律の趣旨は、「休憩とは労働から完全に解放された状態のことであり、手待ち時間があったからといって休憩を与えたことにはならない」ということであり、「労働から完全に解放された時間」を保障することが目的です。就業時間中に、勝手に持ち場を離れて嗜好品であるタバコを吸っている時間を「今は手待ち時間なのだから、労働時間として認めろ」というのは、「手待ち時間」の解釈を誤っています。
確かに、労災認定をめぐった裁判例に、喫煙時間を手待ち時間と判断したものがあります(北大阪労基署長事件・大阪高判平21・8・25)。しかし、これは十分な休憩時間を与えられていなかった労働環境(飲食店にありがちですね)を、業務の過重性判断にあたって裁判所が問題視した結果です。チェーン居酒屋を経営していた会社からの「タバコを吸っていた時間、ちゃんと休憩時間として与えていたでしょ」という主張に対して、裁判所が「そんなのは、休憩時間と認められません」と一蹴しただけのことです。法律の趣旨を理解せず、裁判例の都合の良いところだけつまみ食いしているのは、単なる曲解です。
以上のとおり、法律的には、タバコを吸っている時間は、労働時間ではなく、単に「働いていない時間」なのです。しかも、労働義務のある就業時間中にもかかわらず、勝手に「働いていない」のですから、“単に”ではなく、なおたちの悪い「職務専念義務違反」として懲戒の対象にもなりうるものです。
ご質問のケースのように、社内において「休憩時間以外の喫煙禁止」とルール化されたことは、合理性が認められるものでしょう。
世の中には、「喫煙中は手待ち時間であるから、労働時間である」と考えている人がいるようです。しかし、この考え方は間違いでしょう。「手待ち時間」とは、飲食店や小売店の店員が、営業中お客様のいない時間に来店を待っている状態や、昼休みを与えられていても電話が掛かってきたら取るように指示されている状態のように、「一見、仕事をしていないように見えるけど、何かあればすぐに対応しなければいけない時間」をいいます。法律の趣旨は、「休憩とは労働から完全に解放された状態のことであり、手待ち時間があったからといって休憩を与えたことにはならない」ということであり、「労働から完全に解放された時間」を保障することが目的です。就業時間中に、勝手に持ち場を離れて嗜好品であるタバコを吸っている時間を「今は手待ち時間なのだから、労働時間として認めろ」というのは、「手待ち時間」の解釈を誤っています。
確かに、労災認定をめぐった裁判例に、喫煙時間を手待ち時間と判断したものがあります(北大阪労基署長事件・大阪高判平21・8・25)。しかし、これは十分な休憩時間を与えられていなかった労働環境(飲食店にありがちですね)を、業務の過重性判断にあたって裁判所が問題視した結果です。チェーン居酒屋を経営していた会社からの「タバコを吸っていた時間、ちゃんと休憩時間として与えていたでしょ」という主張に対して、裁判所が「そんなのは、休憩時間と認められません」と一蹴しただけのことです。法律の趣旨を理解せず、裁判例の都合の良いところだけつまみ食いしているのは、単なる曲解です。
以上のとおり、法律的には、タバコを吸っている時間は、労働時間ではなく、単に「働いていない時間」なのです。しかも、労働義務のある就業時間中にもかかわらず、勝手に「働いていない」のですから、“単に”ではなく、なおたちの悪い「職務専念義務違反」として懲戒の対象にもなりうるものです。
ご質問のケースのように、社内において「休憩時間以外の喫煙禁止」とルール化されたことは、合理性が認められるものでしょう。
グルメキャリー234号掲載

飲食店オーナー・経営者のみなさまへ


特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE
昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。
ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201
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