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フードサービス業界の労務相談

※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。

「年休を取得した日に固定残業手当はカットできるか」

質問1

Q.

 私の給与体系は、基本給、通勤手当に加えて一定時間の残業分に相当する残業手当を「固定残業手当」として支給されています。先日、年次有給休暇を取得したところ、この固定残業手当が日割りでカットされていました。店長は「年休を取った日は残業が発生しないのだから当たり前だ」と言うのですが納得いきません
【33才 男性】
答え

A.

 多くの飲食店では、長時間労働が常態化していて、残業代の支払いに頭を悩ませています。その対策として、一定の残業時間分の残業手当を「固定残業手当」として定額で支給しているケースがよく見受けられます。それによって、残業代不払い問題が解決していればいいのですが、この支給方法には落とし穴があるので、経営者は注意が必要です。
 年休は有給休暇なので、取得した日には当然賃金が支払われます。その額は、(1)所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金(2)労働基準法12条による平均賃金(3)健康保険法の標準報酬日額のいずれかであり、あらかじめ就業規則に定めておかなければいけません((3)の場合は労使協定の締結も必要)。ご質問のケースでは、基本給等はカットとなっていないので、(1)の通常の賃金と定められているのでしょう。固定残業手当は、基本給、通勤手当と同様に「月によって定められた賃金」なので、その金額をその月の所定労働日数で割った金額が、「通常の賃金」となります(労働基準法施行規則25条)。実務上は、休暇を取得した日の賃金をいったん控除してから、「通常の賃金」を加算するわけではなく、「通常の出勤をしたものとして」足しも引きもしないことになります。(1)の表現に〝所定労働時間労働した場合に支払われる〟とあるので惑わされそうですが、要するに、年休を取得しても賃金が減らないことに意味があるのです。したがって、お店側の計算方法は違法です。もし、「実際には残業していないのだから」というお店側の言い分が通るのなら、 実際には出勤していないのだから通勤手当も日割りでカットできるという ことになってしまいます。
 先述のとおり、固定残業手当を導入する企業は多いのですが、実際の残業時間に対する残業代が固定残業に達しなくても(ご質問のケースのような場合も含めて)、固定分は定額の支払いが必要であり、逆に実際の残業代が固定分を超えると、その超えた分は支給しなければいけません。つまり、固定残業手当で支払うと、実際の残業時間に基づいて真面目に残業代を支払うよりも、損することはあっても得することはありません。この制度を導入しようとしている経営者は、よく理解しておかなければいけません。
グルメキャリー130号掲載

飲食店オーナー・経営者のみなさまへ
飲食業に強い社労士です!
久野先生

特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE

昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。

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