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フードサービス業界の労務相談

※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。

「お店の側から、無理やり年次有給休暇を取らせることはできるか」

質問1

Q.

 飲食店で正社員として働いています。先日、店長から「明日は人手が足りてるから、休んでもいいよ。給料も減額にならないよ」と言われ、ラッキー♪というノリでそのまま休みました。ところが、後から知ったのですが、その日は勝手に有給休暇が使われていました。このような扱いは許されるのですか。   
【28才 女性】
答え

A.

 論点がいくつかありますが、原則的には、お店のやり方は許されません。
 労働基準法に定められる年次有給休暇(年休)は、雇入れから6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上の出勤率を達成した労働者に、10日分の権利(年休権)が発生します。その後、継続勤務1年ごとに、8割以上の出勤率を満たすことで、所定の増加した日数の年休権が発生します。
 この発生した年休の権利を使い、実際に休もうとする場合には、労働者から使用者(お店の側)に対して、あらかじめ「○月○日に年休を取ります」と意思表示をして、取得する日を指定します(時季指定権)。一方の使用者は、その指定された日が、事業の正常な運営を妨げる場合には、ほかの日に取得するように変更させることができます(時季変更権)。労働者が時季指定権を行使すると、使用者が時季変更権を行使しない限り、自動的に年休は成立します。
 ちなみに、使用者による「時季変更権」は、ちょっとやそっとでは認められません。単に忙しいだとか人手が足りないぐらいでは「事業の正常な運営を妨げる」ことにはならず、シフト表を変更したり、代替要員を探したり、相当の配慮をしてもどうしても年休を与えることができないときに限り、時季変更権の行使が可能となります。
 さて、このように年休とは、労働者から「○月○日に取ります」と時季指定権を行使して、初めて成立するものです。使用者の側から「○月○日に年休を取れ」と無理やりに取らせることはできないというのが大原則です。
 ただし、この原則には唯一の例外があります。それは「計画年休」という制度です。計画年休とは、労働者が持っている年休権のうち、5日を超える日数(例えば、12日分の権利があれば、7日分が対象)については、使用者の側から「あなたは○月○日に年休を取りなさい」という具合に、計画的に与えることのできる制度です。付与の方法は、個人別に付与日を決めてもいいし、グループ別に与えることも、事業場の従業員いっせいに与えることも可能です。
 計画年休制度を導入するためには、使用者と、労働者の過半数代表者との間で労使協定を締結することが必要です。計画年休は、年休の取得促進を目的に、労働基準法を改正して盛り込まれた制度です。年休権のあるすべての日数を計画付与の対象とすると、病気や個人的理由で使うことができなくなるため、少なくとも5日は本人が自由に使える日数として残しておかなければなりません。
 以上のとおり、計画年休を導入していない限り、お店の側から強制的に年休を取得させることはできないというわけです。
 では、今回のケースでは、お店はどうするべきだったのでしょうか。休みを与えた日は仕事をしていないのですから無給で良いのでしょうか。いいえ。このように使用者の責任で休業させた場合には、少なくとも労働基準法26条にもとづき、平均賃金60%以上の「休業手当」を支払わなければなりません。それだけに留まらず、労働者からは民法536条2項にもとづき、本来の賃金100%を請求することが可能な場合もあります。
飲食店オーナーの方へ

飲食店オーナーの方へ

 お休みを多く与えることができそうなときに、良かれと思って年休を取得したことにしているケースもあるようですが、本文のとおりそれは誤りです。
グルメキャリー332号掲載

飲食店オーナー・経営者のみなさまへ
飲食業に強い社労士です!
久野先生

特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE

昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。

ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201

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第26回 飲食×レストラン業界合同企業説明会 秋葉原 秋葉原UDX 2F アキバ・スクエア
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