
※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。
「アルバイトの年休取得日に「通常の賃金」を支払う場合、日ごろの残業は加味されないのか」

Q.
1日5時間、週3日でアルバイトをしています。ただ、忙しい日が多いので、実際には6時間~8時間働いて帰ることが多いです。
さて、先日、有給休暇を何日か取得しました。お店の就業規則では、有給休暇を取得した日の賃金は、「通常の賃金を支払う」となっていて、確かに1日につき、5時間分の賃金を支払われました。でも、先述のとおり、実際には5時間で帰ることができる日の方が少ないくらいなので、なんとなく納得いかないのですが。
さて、先日、有給休暇を何日か取得しました。お店の就業規則では、有給休暇を取得した日の賃金は、「通常の賃金を支払う」となっていて、確かに1日につき、5時間分の賃金を支払われました。でも、先述のとおり、実際には5時間で帰ることができる日の方が少ないくらいなので、なんとなく納得いかないのですが。
【36才 男性】

A.
結論としては、年次有給休暇(年休)を取得した日の賃金が、「通常の賃金」と定められている場合、そのような状態になっても仕方のないことと言えます。
年休を取得した日の賃金については、次の3つのうちのいずれかを選択して、就業規則等に定めておかなければなりません(労働基準法39条7項)。
(1)労働基準法12条に定められる「平均賃金」
(2)通常の賃金
(3)健康保険法における「標準報酬月額」の30分の1
まず、(3)については、使用者(お店の側)と労働者代表との間で「労使協定」を締結する必要がありますし、そもそも健康保険に加入していないと標準報酬月額が決められていないため、あまり採用されていない方法です。
(1)の「平均賃金」とは、算定する事由が発生した日(今回の場合、年休を取得した日)の直前の賃金締め日からさかのぼって「3ヶ月間に支払われた賃金総額を、3ヶ月間の総日数(暦日数)で割って」算出した賃金です。
時給制や日給制の場合、平均賃金が少額になりすぎないように、「3ヶ月間の賃金総額を、3ヶ月間の実労働日数で割った額」の60%が最低保障額とされています。
そして最後の(2)の「通常の賃金」とは、年休取得日に、通常どおり、所定労働時間働いたものとして賃金を支払うことです。
月給制の場合、実際にはわざわざ年休取得日の賃金をカットして、「通常の賃金」を加算するのではなく、月給から引き算も足し算もしないという処理になります。
時給制の場合、年休取得日における、本来の所定労働時間分の賃金を支給することになります。
したがって、ご質問のように就業規則で「通常の賃金」を支給することになっている場合、年休取得日の所定労働時間が5時間なら、5時間分の賃金を支払ったお店の処理は正しいわけです。確かに、常日頃から所定労働時間を超えて働くことが多いようですと、年休取得日に支払われる賃金は、感覚的には「通常の賃金」よりも少ないので、納得がいかないかもしれません。ただ、それを言うなら、月給制の場合でも、「通常の賃金」には、普段の残業代は加味されていないのは同じです。お店のルールとして、年休取得日の賃金に、「通常の賃金」を採用している限り、これは仕方のないことです。
なお、月給制の正社員には「通常の賃金」を、時給制のアルバイトには「平均賃金」を採用しているお店も多いようです。
年休を取得した日の賃金については、次の3つのうちのいずれかを選択して、就業規則等に定めておかなければなりません(労働基準法39条7項)。
(1)労働基準法12条に定められる「平均賃金」
(2)通常の賃金
(3)健康保険法における「標準報酬月額」の30分の1
まず、(3)については、使用者(お店の側)と労働者代表との間で「労使協定」を締結する必要がありますし、そもそも健康保険に加入していないと標準報酬月額が決められていないため、あまり採用されていない方法です。
(1)の「平均賃金」とは、算定する事由が発生した日(今回の場合、年休を取得した日)の直前の賃金締め日からさかのぼって「3ヶ月間に支払われた賃金総額を、3ヶ月間の総日数(暦日数)で割って」算出した賃金です。
時給制や日給制の場合、平均賃金が少額になりすぎないように、「3ヶ月間の賃金総額を、3ヶ月間の実労働日数で割った額」の60%が最低保障額とされています。
そして最後の(2)の「通常の賃金」とは、年休取得日に、通常どおり、所定労働時間働いたものとして賃金を支払うことです。
月給制の場合、実際にはわざわざ年休取得日の賃金をカットして、「通常の賃金」を加算するのではなく、月給から引き算も足し算もしないという処理になります。
時給制の場合、年休取得日における、本来の所定労働時間分の賃金を支給することになります。
したがって、ご質問のように就業規則で「通常の賃金」を支給することになっている場合、年休取得日の所定労働時間が5時間なら、5時間分の賃金を支払ったお店の処理は正しいわけです。確かに、常日頃から所定労働時間を超えて働くことが多いようですと、年休取得日に支払われる賃金は、感覚的には「通常の賃金」よりも少ないので、納得がいかないかもしれません。ただ、それを言うなら、月給制の場合でも、「通常の賃金」には、普段の残業代は加味されていないのは同じです。お店のルールとして、年休取得日の賃金に、「通常の賃金」を採用している限り、これは仕方のないことです。
なお、月給制の正社員には「通常の賃金」を、時給制のアルバイトには「平均賃金」を採用しているお店も多いようです。


飲食店オーナーの方へ
本文最後にも触れましたが、労働時間がまちまちになりがちな時給制のアルバイトには、年休取得日の賃金を「平均賃金」で支払うのが、もっとも納得を得やすいのではないでしょうか。
グルメキャリー345号掲載

飲食店オーナー・経営者のみなさまへ


特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE
昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。
ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201
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