
※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。
「お店が健康保険を任意脱退後、任意継続被保険者になれるか」

Q.
私の勤めるお店は個人経営で、健康保険は強制加入ではないのですが、任意加入をしていました。ところが、お店の経営状況が良くなく、保険料負担に耐えられなくなり、任意脱退することになりました。私は引き続き健康保険に加入していたいのですが、任意継続被保険者になることはできますか。
【26才 男性】

A.
結論としては、お店が健康保険を任意脱退した場合、あなたは任意継続被保険者になることはできません。
健康保険と厚生年金保険は、株式会社のような法人経営の場合、その事業所は強制的に加入しなければなりません(適用事業所となる)。一方、個人経営の事業所の場合、業種によって異なります。法律で定められた16種類の業種については、従業員数5人以上だと強制適用となり、5人未満だと任意適用(加入したい事業所だけ加入)となります。法律で定められた16業種以外は、従業員数にかかわらず任意適用です。飲食店は16業種以外ですので、従業員が何人いても、任意適用です。
任意適用の事業所が、健康保険・厚生年金保険に加入するには、(1)被保険者となるべき者の2分の1以上の同意 (2)事業主の認可申請 (3)厚生労働大臣の認可、という要件を満たさなければなりません。
また、任意加入により適用事業所となった事業主は、(1)被保険者の4分の3以上の同意 (2)事業主の認可申請 (3)厚生労働大臣の認可、という要件を満たして、健康保険・厚生年金保険から脱退することができます。お店が任意脱退すると、同意しなかった者もふくめて被保険者の資格を喪失します。
次に、任意継続被保険者についてです。資格喪失日の前日まで継続して2ヶ月以上被保険者であった者が、資格を喪失し、資格喪失の日から20日以内に申出をすることで、任意継続被保険者となることができます。ここで言う「資格を喪失」とは、通常は退職による喪失を指し、勤務先が任意脱退したことによる資格喪失は含まれません。任意脱退は、同意していなかった者も含めて「抜けたくて脱退した」とみなされ、「じゃあ、わざわざさらに任意で継続する必要もないはずだろう」というのが、法律の趣旨なのでしょう。
グルメキャリー223号掲載

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特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE
昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。
ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201
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