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フードサービス業界の労務相談

※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。

「社員旅行中の事故は、労災の業務上災害となるか」

質問1

Q.

 先日、社員旅行に参加したのですが、移動中に転んでケガをしました。これは労災として認められますか。 
【25才 男性】
答え

A.

  ポイントは、その社員旅行の参加が「業務」と認められるかどうかとなりますが、現実には、社員旅行中の事故が労災認定されることはほとんどありません。
 一般に、病気やケガが労災保険における業務上災害として認められるためには、「業務遂行性」「業務起因性」が認められなければならないとされています。「業務遂行性」とは、労働者が労働契約にもとづいて事業主の支配下にあること、「業務起因性」とは、業務と病気・ケガとの間に相当因果関係があることとなっています。
 事業主の支配下にあるかどうかの判断基準としては、まず社内旅行への参加が強制されているかどうかが問題となります。全員参加が強制され、不参加は欠勤と扱われ、必要な旅費等が全額事業主負担である場合には、事業主の支配下にあると評価される可能性はあります。また、旅行への参加が労務管理上の必要性がある(例えば、業務に必要な研修を実施するなど)ことも、業務遂行性があると判断される要素になります。
 しかし、参加は強制ではなく、不参加でも不利益な扱いを受けず、旅行積立金などによる本人の費用負担があり、慰安を目的とした旅行であるとすると、業務遂行性は認められることはありません。
 例外的に、会社から世話役や幹事を任命された上で、旅行に参加している場合には、業務遂行性があったと認められる可能性はあります。
 このように、社員旅行に関しては、業務遂行性について厳しく判断されるので、実際には労災認定されることはほとんどないようです。
グルメキャリー232号掲載

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久野先生

特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE

昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。

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