
※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。
「役員の社会保険料免除について、産前産後休業と育児休業の違い」

Q.
私は、正社員から専任の取締役に登用された女性です。このたび出産することになり、産前産後休業(産休)に引き続き育児休業(育休)も取ることになりました。ところで、以前従業員は産休中も育休中も社会保険料は免除されていたのに、役員の場合、育休中の免除は受けられないと言われました。これはなぜですか。また、休業中の給付金も、産休中だけもらえて、育休中はもらえないのですか。
【32才 女性】

A.
役員も従業員も、同じように社会保険(健康保険と厚生年金保険)に加入します。しかし、ほかの法律における適用関係が異なるので、社会保険での扱いが異なることも起こります。
役員は労働者ではないので、労働基準法は適用されません。また、育児介護休業法も適用されません。したがって、労働基準法に定められる産前産後休業の適用もありません。しかし、健康保険法・厚生年金保険法には、独自に産前産後休業が定義されています(休業期間は労働基準法とまったく同じです)。したがって、役員も従業員も同様に、産前産後休業中の保険料が免除されます。
一方、健康保険法・厚生年金保険法における育児休業とは、育児介護休業法にもとづくものとなっています。従業員の場合、育児介護休業法にもとづく育児休業を取得することになるので、健康保険法・厚生年金保険法に定められる「育児休業中の保険料免除」の規定が適用されます。それに対し、役員の場合、育児介護休業法そのものが適用されないので、たとえ社内で「育児休業」と称して休業していても、それは健康保険法・厚生年金保険法における育児休業には該当しないため、保険料の免除も受けられないというわけです。
次に、休業中の給付金についてです。産前産後休業中に受けられる「出産手当金」は、健康保険の制度から給付されるものですので、役員も従業員も、同じようにもらえます。
それに対し、育児休業中に受けられる「育児休業給付金」は、雇用保険の制度から給付されるものです。専任の取締役は雇用保険に加入できないため、この給付金は従業員だけがもらえるものとなります。
役員は労働者ではないので、労働基準法は適用されません。また、育児介護休業法も適用されません。したがって、労働基準法に定められる産前産後休業の適用もありません。しかし、健康保険法・厚生年金保険法には、独自に産前産後休業が定義されています(休業期間は労働基準法とまったく同じです)。したがって、役員も従業員も同様に、産前産後休業中の保険料が免除されます。
一方、健康保険法・厚生年金保険法における育児休業とは、育児介護休業法にもとづくものとなっています。従業員の場合、育児介護休業法にもとづく育児休業を取得することになるので、健康保険法・厚生年金保険法に定められる「育児休業中の保険料免除」の規定が適用されます。それに対し、役員の場合、育児介護休業法そのものが適用されないので、たとえ社内で「育児休業」と称して休業していても、それは健康保険法・厚生年金保険法における育児休業には該当しないため、保険料の免除も受けられないというわけです。
次に、休業中の給付金についてです。産前産後休業中に受けられる「出産手当金」は、健康保険の制度から給付されるものですので、役員も従業員も、同じようにもらえます。
それに対し、育児休業中に受けられる「育児休業給付金」は、雇用保険の制度から給付されるものです。専任の取締役は雇用保険に加入できないため、この給付金は従業員だけがもらえるものとなります。

飲食店オーナーの方へ
社会保険料免除が受けられないということは、本人負担分だけでなく、お店側の負担も発生するということですので、大きなコストの問題です。経営者としては、しっかり理解しておかなければなりません。
グルメキャリー293号掲載

飲食店オーナー・経営者のみなさまへ


特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE
昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。
ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201
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