
※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。
「入社日までにケガをした採用内定者の内定取消しについて」

Q.
この春に専門学校を卒業して、調理人として飲食業の会社に入社が内定していました。ところが、卒業旅行でスキーに行ったところ骨折をしてしまい、会社からは「店舗の現場で働けないのなら内定取消しだ」と言われました。これは法律で認められるのですか。
【20才 男性】

A.
まず、「採用内定」とは法律的にはどういう状態なのかを確認しましょう。判例によると、採用内定とは「卒業をしたら就労を開始し、それまでは内定を取り消すことができる労働契約」、つまり「始期付解約権留保付労働契約」である、としています。ただし、内定を取り消すこと(解約権を行使)ができるとはいっても、労働契約が成立している以上は、広い意味での解雇であり、そのためには客観的・合理的に認められ社会通念上相当であることが必要で、採用内定時には分からなかった事由でなければいけません。具体的には、単位が足りずに卒業できなかったとか、心身の健康状態の悪化、重大な経歴詐称、犯罪行為による逮捕・起訴などが挙げられます。ご質問のケースのように、ケガをしたことで予定していた業務に従事できないとなると、内定取消しが有効となる可能性が高いでしょう。しかしながら、法律的に認められるかどうかのみならず、将来の活躍が期待できる優秀な人材をここで失っていいものかという観点も会社側には必要です。例えば、入社時期を変更するなどの解決策を、会社とよく相談するべきです。
グルメキャリー118号掲載

飲食店オーナー・経営者のみなさまへ


特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE
昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。
ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201
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