
※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。
「新卒採用、配属未定で就業場所の明示はどこまで必要か」

Q.
今春、専門学校を卒業し、全国展開する飲食チェーンの会社に就職することになりました。入社直後は本社で研修を受け、その後、いずれかの店舗に配属される予定です。全国のどこに配属されるか分からないというのは不安なのですが、現時点で決定されていないのは問題無いのですか。
【20才 男性】

A.
採用されて入社をするということは、労働契約という名の契約を締結することです。この契約は、契約書が無くても口約束でも成立します。しかし、口約束だけでは、後々労働条件について言った言わないのトラブルになる恐れがあります。そこで、労働基準法15条では、労働契約の締結時に一定の労働条件について明示義務を課し、その中でも特に重要な事項については、書面で明示することを義務付けています。この書面明示事項には、「就業の場所及び従事すべき業務」も定められています。しかし、採用後に配置転換により就業場所や業務内容が変更になることもあるでしょう。特に、新卒一括採用の場合は、ご質問のように研修後に配属が決定されることも多くあります。行政通達によると、「雇い入れ直後の就業の場所及び従事すべき業務を明示すれば足りるものであるが、将来の就業場所や従事させる業務を併せ網羅的に明示することは差し支えない」としています。したがいまして、ご質問のケースについても、雇い入れ直後の労働条件を書面明示している限りは、明示義務違反とはなりません。
グルメキャリー184号掲載
飲食店オーナー・経営者のみなさまへ


特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE
昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。
ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201
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