
※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。
「従わなければ解雇になると思い込んで署名した同意書は有効か」

Q.
お店から突然、「来月から賃金を引き下げる。この同意書に署名しろ」と言われました。同意しないと解雇になると思い込んだ私は、提示された賃金額で署名してしまいました。私はこの賃金引き下げに従うしかないのでしょうか。
【27才 男性】

A.
雇う雇われるの関係は、労働契約という名の契約です。賃金を含めた労働条件は契約によって決定されるものです。したがって、使用者(お店の側)が一方的に引き下げることはできず、労働者の同意が必要となります(労働契約法8条)。これを知った使用者の中には、「じゃあ、同意した証拠を残すために、とにかく同意書に署名させればいいんだ」と早合点する者もいます。しかし、あたりまえのことですが、形の上だけ書面に署名しても、それは同意したことにはなりません。労働者の同意は、真に自由意思にもとづいて、本心から示したものであると、客観的に認められるものでなければなりません。そのために重要なのは、労働条件変更の必要性等を、どれだけ説明を尽くし、理解を得ていたのか、が問われます。
ご質問のように、ろくに説明もせずとにかく署名しろ、と言っただけでは、とうてい十分な手続を踏んだとは認められません。また、同意しなければ解雇になると思い込み、いわば勘違いで署名した場合、その同意には錯誤があったとして無効となります(民法95条)。
このように、お店の側にとっても、労働条件変更にあたって同意を得ることは確かに重要ですが、「とにかく署名さえさせればいいんだ」と考えるのは誤りです。
ご質問のように、ろくに説明もせずとにかく署名しろ、と言っただけでは、とうてい十分な手続を踏んだとは認められません。また、同意しなければ解雇になると思い込み、いわば勘違いで署名した場合、その同意には錯誤があったとして無効となります(民法95条)。
このように、お店の側にとっても、労働条件変更にあたって同意を得ることは確かに重要ですが、「とにかく署名さえさせればいいんだ」と考えるのは誤りです。
グルメキャリー198号掲載

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特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE
昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。
ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201
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