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フードサービス業界の労務相談

※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。

「親の介護をしているが、転勤命令に従わなければならないか」

質問1

Q.

全国チェーンの飲食店に勤めています。自宅は東京なのですが、先日、大阪の店舗への転勤を命じられました。私は夫婦共働きで、また、数年前から母親を自宅で介護していますので、転勤は難しい状況です。それでも私は従わなければいけませんか。
【38才 男性】
答え

A.

会社の転勤命令に従わなければいけないかどうか、法律の条文には直接定められてはいませんが、最高裁判例により、考え方としては確立されつつあります。
 まず、「就業場所の変更」は契約内容の変更なのですから、労働契約上の根拠として、本人の同意が必要となります。しかし、複数店舗があり、転勤が日常的に実施されている企業では、就業規則に「会社は、業務上必要があるときは、従業員の就業する場所の変更を命ずることがある」といった条項が定められているのが一般的です。勤務場所を特定して採用されたわけではなければ、この就業規則により包括的な同意がなされているとされ、個別の同意は必要ないことになります。
 次に、転勤の命令権が認められても、その権利の行使が濫用にあたってはいけません。具体的には、(1)転勤に業務上の必要性があること(2)いじめや嫌がらせのような、不当な動機・理由によるものでないこと(3)労働者に通常甘受すべき程度著しく超える不利益がないこと、の3点から判断されます。
 ご質問のケースでは、仮に(1)(2)はクリアするとしましょう。問題は、共働きで親の介護中という家庭事情がありながら転勤に従うことが、(3)の「通常甘受すべき程度を著しく越える不利益」にあたるかどうかがです。この点について、従来、裁判所は労働者に厳しめの判断をする傾向にあり、なかなか家庭事情について「著しい不利益」と認めてきませんでした。
 しかし、先例となった最高裁判例は30年近くも前のものです。近年は社会背景の変化により、企業はワークライフバランス(仕事と生活の調和)に配慮することが法的にも求められています(労働契約法3条3項)。また、育児介護休業法には、転勤により子の養育または家族の介護が困難にならないように配慮しなければならないとする規定もあります(育介法26条)。ここ10年ほどの裁判例には、この育介法の条文を根拠に、転勤命令を無効としたものも出てきています。
 このように、共働きで子育てや介護をしているという家庭事情がある場合には、転勤命令が無効となる可能性も十分考えられます。そして、企業側は、人事異動にあたっては、労働者の事情に配慮した上で命じなければいけない時代なのだと認識しなければいけません。
グルメキャリー208号掲載
イラスト

飲食店オーナー・経営者のみなさまへ
飲食業に強い社労士です!
久野先生

特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE

昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。

ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201

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