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フードサービス業界の労務相談

※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。

「就業規則ができる前の行為について、懲戒処分ができるか」

質問1

Q.

  私の勤めるお店に就業規則ができました。その説明があった後、突然店長から、「君は1年前に、お店に無断でアルバイトをしていたね。早速だけど、就業規則の『会社の許可無く、他社で就業してはならない』という服務規律に違反しているので、懲戒処分を行うよ」と言われました。確かに他社で無断アルバイトをしていたことは本当ですが、今になって懲戒処分をするなんて許されるのですか。 
【30才 男性】
答え

A.

  結論としては、このように、就業規則ができる前に遡って、お店が懲戒処分を行うことは許されません。
 まず、使用者(お店の側)には、企業秩序を維持するために、労働者が企業秩序を乱す行為をした場合には、その労働者を懲戒する権利があるとされています。ただし、懲戒権を実際に行使するためには、あらかじめ就業規則に、どんな行為をしたときに(懲戒の事由)、どんな種類の懲戒(減給や出勤停止等、懲戒の種別)を定めておかなければなりません。就業規則に定められていない行為に対して懲戒をすることはできませんし、定められていない種類の懲戒をすることはできません。また、そもそも就業規則のない事業所では、懲戒処分そのものができないとも言えます。
 次に、いくら就業規則に懲戒規定が定められていて懲戒権を行使できるとしても、その行使のしかたが、「労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」とされています(労働契約法15条)。具体的には、同じ行為をしたAさんとBさんには同じ処分を行うべきであること(平等取扱いの原則)、やった行為の重さと処分の重さに釣り合いが取れていること(処分相当性の原則)、弁明の機会を与えるなど手続が適正であること、等が懲戒権の濫用であるか否かの判断基準となります。
 さらに、企業内の懲戒処分は、刑罰法規に似ていることから、「罪刑法定主義」の原則が当てはまるとも考えられています。具体的には、懲戒規定が定められる前の行為について処分をすることはできない(不遡及の原則)、同じ事由について二重の処分をすることはできない(一事不再理の原則)ということです。
 以上のとおり、ご質問のように就業規則の作成によってあらたに懲戒規定ができた場合、その規定ができる前の行為について処分をすることは、「不遡及の原則」に反することになるので、許されません。
グルメキャリー230号掲載

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久野先生

特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE

昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。

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