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フードサービス業界の労務相談

※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。

「痴漢で逮捕されれば懲戒解雇は当たり前か」

質問1

Q.

  電車内で痴漢をしてしまい、罰金刑となりました。お店からは、「そんな奴を雇っているわけにはいかない。当然、懲戒解雇だ」と言われました。これは仕方のないことでしょうか。 
【32才 男性】
答え

A.

  「痴漢で逮捕されてクビになった」といった話を聞くことがありますが、一般的にはそれで当たり前と思われているのかもしれません。しかし、実は、私生活上の行為に対して、企業は懲戒処分の対象とすることができないのが、むしろ大原則なのです。
 そもそも、使用者に懲戒権が認められているのは、企業秩序を維持するためと考えられています。私生活上の行為については、業務に影響を及ぼしたり、企業の信用を毀損・失墜させたりした場合に限り、企業秩序を乱したものとして懲戒の対象となりえるのです。
 たとえ、刑事事件で有罪となっても、その行為の性質、企業側の事業内容や規模、従業員の企業内における地位や職種などを総合的に考慮して、懲戒処分の有効性が判断されます。ましてや、逮捕はされても取り調べの結果、嫌疑なしとして起訴されなかった場合には、懲戒に処することは許されないでしょう。
 痴漢事件に関しては、執行猶予付き懲役刑の判決を受けた鉄道会社の社員に対する懲戒解雇が有効と認められた裁判例があります。電車内における乗客の迷惑や被害を防止すべき鉄道会社の社員であり、その従事する倫理規範としてそのような行為をしてはならない立場にあったこと、その半年前にも痴漢で罰金刑となり、社内で降職等の懲戒処分を受けていたことなどから、裁判所は懲戒解雇もやむを得ないという判断をしました。しかし、その裁判例では、懲戒解雇は有効であるが、退職金の全額没収については、「それまでの勤続の功を抹殺するほど強度な背信性を持つ行為とはいえない」として、退職金の3割の支払を会社に命じています。状況が特殊な裁判例ですが、会社にとって懲戒処分はそれだけハードルが高いことがお分かりいただけるかと思います。
 以上を踏まえてご質問のケースを考えてみます。罰金刑という有罪判決を受けているとはいえ、マスコミ報道されて企業の社会的信用に傷をつけたとか、初犯ではなく常習犯であったという事実が無い限り、懲戒解雇は重すぎる処分と判断される可能性が高いでしょう。
グルメキャリー241号掲載

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久野先生

特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE

昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。

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