
※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。
「健康診断後、要再検査の通知されず悪化した場合のお店の責任」

Q.
去年、お店で受けた健康診断で、血圧測定の結果が要再検査の診断だったのに、お店が教えてくれませんでした。1年近く放置していた結果、かなり悪化しているようです。このような場合、お店の責任を追及できるものですか。
【36才 男性】

A.
状況次第で、お店の側は、損害賠償責任を負う可能性があります。
まず、健康診断の法的位置づけを確認しましょう。労働安全衛生法では、「事業者は、常時使用する労働者に対し、1年に1回(深夜業従事者は6ヶ月に1回)の健康診断を実施しなければならない」として、定期健康診断の実施を義務づけています(66条1項)。そして、健康診断の実施後には、健康診断個人票を作成・保存し、結果を労働者へ通知しなければなりません(66条の3、66条の7)。また、健康診断の結果、異常の所見があった場合、医師等から意見を聴取し、その意見を勘案して就業上の措置を講じなければなりません(66条の4、66条の5)。なお、事業者が健康診断を実施しない場合、50万円以下の罰金という刑事罰が定められています(120条)。
労働安全衛生法を遵守することだけを考えれば、要再検査と診断された労働者に対して、健診結果とともに、「再検査を受けなければいけませんよ」と通知するだけで、条文上の義務はクリアしたことになります。
一方、労働契約法では、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と、安全配慮義務について定められています(5条)。たとえば、再検査を受けなければならないほどの健康状態であることを知りながら、そのまま働かせて、状態が悪化した場合には、安全配慮義務違反として、民事的に損害賠償を請求される可能性が生じます。裁判例の中には、精密検査が必要な労働者に対し、その通知はしていたものの、実際に受診するかどうかは本人に任せていたままで、業務軽減等の措置をとらなかったために、症状が悪化して死亡したケースで、企業側に損害賠償責任があると判断されたものがあります。
以上を踏まえて、ご質問のケースを考えてみましょう。そもそも、健康診断の結果さえ通知していないとのことですので、この時点で明らかな労働安全衛生法違反となります。そして、本来は再検査を受けさせて、就業上の措置を講じなければならないところ、なんら配慮をしていなかった結果、症状が悪化としたら、安全配慮義務違反として損害賠償請求が認められる可能性があります。
経営者の側は、健康診断を福利厚生の一環程度にしか考えていないことが多いものです。しかし、健康診断は実施のみならず事後措置まで適切に対処していないと、大きな経営リスクになるものなのです。
まず、健康診断の法的位置づけを確認しましょう。労働安全衛生法では、「事業者は、常時使用する労働者に対し、1年に1回(深夜業従事者は6ヶ月に1回)の健康診断を実施しなければならない」として、定期健康診断の実施を義務づけています(66条1項)。そして、健康診断の実施後には、健康診断個人票を作成・保存し、結果を労働者へ通知しなければなりません(66条の3、66条の7)。また、健康診断の結果、異常の所見があった場合、医師等から意見を聴取し、その意見を勘案して就業上の措置を講じなければなりません(66条の4、66条の5)。なお、事業者が健康診断を実施しない場合、50万円以下の罰金という刑事罰が定められています(120条)。
労働安全衛生法を遵守することだけを考えれば、要再検査と診断された労働者に対して、健診結果とともに、「再検査を受けなければいけませんよ」と通知するだけで、条文上の義務はクリアしたことになります。
一方、労働契約法では、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と、安全配慮義務について定められています(5条)。たとえば、再検査を受けなければならないほどの健康状態であることを知りながら、そのまま働かせて、状態が悪化した場合には、安全配慮義務違反として、民事的に損害賠償を請求される可能性が生じます。裁判例の中には、精密検査が必要な労働者に対し、その通知はしていたものの、実際に受診するかどうかは本人に任せていたままで、業務軽減等の措置をとらなかったために、症状が悪化して死亡したケースで、企業側に損害賠償責任があると判断されたものがあります。
以上を踏まえて、ご質問のケースを考えてみましょう。そもそも、健康診断の結果さえ通知していないとのことですので、この時点で明らかな労働安全衛生法違反となります。そして、本来は再検査を受けさせて、就業上の措置を講じなければならないところ、なんら配慮をしていなかった結果、症状が悪化としたら、安全配慮義務違反として損害賠償請求が認められる可能性があります。
経営者の側は、健康診断を福利厚生の一環程度にしか考えていないことが多いものです。しかし、健康診断は実施のみならず事後措置まで適切に対処していないと、大きな経営リスクになるものなのです。
グルメキャリー242号掲載

飲食店オーナー・経営者のみなさまへ


特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE
昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。
ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201
業務案内:給与計算、労働・社会保険の手続き代行、就業規則の診断・作成 店長・管理職対象労務研修の実施、人事・労務相談