
※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。
「お店の業績悪化を理由に、試用期間を延長できるか」

Q.
今のお店には、試用期間3ヶ月という約束で採用されました。また、試用期間が満了して本採用されれば、給料もアップするという話でした。まもなくその3ヶ月が経過するというところで、店長から「お店の業績が悪化しているので、試用期間を延長する」と言われました。業績悪化を理由に、試用期間を延長することは許されるのですか。
【29才 男性】

A.
結論としては、お店の業績悪化を理由とする試用期間の延長は許されないでしょう。
まず、試用期間の法的性質を確認しておきましょう。通常、従業員として採用されるのは、筆記試験や面接試験といった採用選考を通じて採否が決定されます。しかし、使用者(お店の側)にしてみれば、採用選考だけで、採用者がその仕事に本当に向いているかどうかを見極めるのは難しいものです。そこで、一定の期間をお試し期間として実際に働いてもらい、その間に従業員としての適格性の有無を観察するという制度を設けることが一般的となっています。このようなお試し期間を試用期間といいます。試用期間満了後、適格性があると判断されれば晴れて本採用となり、適格性無しとなれば本採用拒否となります。使用者が本採用を拒否するということは、労働契約を解約することであり、試用期間中はこの解約する権利を保持しているため、試用期間とは、法的には「解約権留保付労働契約」が成立していることになります。使用者による本採用拒否は、労働契約の解約なのですから、広い意味では解雇にあたります。したがって、労働契約法16条が適用され、客観的合理的理由と社会通念上相当性がなければ、その本採用拒否(解雇)は無効となります。ただし、通常の解雇に比べると、解雇が認められる基準が緩やかになります。
次に、試用期間の延長についてです。いくつかの裁判例によりますと、試用期間満了時にすでに従業員として不適格と判断された者について、すぐに本採用拒否とせずに、今後の勤務状況しだいでは本採用しようとする場合や、配置転換をするなどして職務適格性を見出すことを目的とした場合には、試用期間を延長することが許されるとしています。ただし、この場合でも、就業規則等に延長の規定があり、延長期間を定めた上で延長することが条件となります。このように、試用期間が延長できるのは、本来は本採用拒否となる者について、もう少し様子を見てあげる場合に限られるということです。
それでは、ご質問のケースはどうでしょうか。お店の業績悪化は、使用者側の経営上の問題です。試用期間の趣旨である、採用者について適格性有無の観察とは、なんら関係ないことです。したがって、このような理由で、試用期間という不安定な地位を延長することは許されないと考えられます。
まず、試用期間の法的性質を確認しておきましょう。通常、従業員として採用されるのは、筆記試験や面接試験といった採用選考を通じて採否が決定されます。しかし、使用者(お店の側)にしてみれば、採用選考だけで、採用者がその仕事に本当に向いているかどうかを見極めるのは難しいものです。そこで、一定の期間をお試し期間として実際に働いてもらい、その間に従業員としての適格性の有無を観察するという制度を設けることが一般的となっています。このようなお試し期間を試用期間といいます。試用期間満了後、適格性があると判断されれば晴れて本採用となり、適格性無しとなれば本採用拒否となります。使用者が本採用を拒否するということは、労働契約を解約することであり、試用期間中はこの解約する権利を保持しているため、試用期間とは、法的には「解約権留保付労働契約」が成立していることになります。使用者による本採用拒否は、労働契約の解約なのですから、広い意味では解雇にあたります。したがって、労働契約法16条が適用され、客観的合理的理由と社会通念上相当性がなければ、その本採用拒否(解雇)は無効となります。ただし、通常の解雇に比べると、解雇が認められる基準が緩やかになります。
次に、試用期間の延長についてです。いくつかの裁判例によりますと、試用期間満了時にすでに従業員として不適格と判断された者について、すぐに本採用拒否とせずに、今後の勤務状況しだいでは本採用しようとする場合や、配置転換をするなどして職務適格性を見出すことを目的とした場合には、試用期間を延長することが許されるとしています。ただし、この場合でも、就業規則等に延長の規定があり、延長期間を定めた上で延長することが条件となります。このように、試用期間が延長できるのは、本来は本採用拒否となる者について、もう少し様子を見てあげる場合に限られるということです。
それでは、ご質問のケースはどうでしょうか。お店の業績悪化は、使用者側の経営上の問題です。試用期間の趣旨である、採用者について適格性有無の観察とは、なんら関係ないことです。したがって、このような理由で、試用期間という不安定な地位を延長することは許されないと考えられます。
グルメキャリー251号掲載

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特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE
昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。
ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201
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