
※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。
「学歴を低く詐称していた場合、懲戒解雇が認められるか」

Q.
実は私は大学中退なのですが、転職活動で印象が悪くなると思い、履歴書には高卒ということにしておきました。その後、あるお店に採用されたのですが、勤務を始めて何ヶ月かたったところで、学歴を詐称していたことがバレてしまいました。お店からは、経歴詐称により信頼関係を損なったとして、懲戒解雇を言い渡されました。しかし、学歴を高く偽って懲戒になるのはまだ分かるのですが、低く偽った場合にも懲戒解雇が許されるのでしょうか。
【25才 男性】

A.
裁判例には、学歴詐称が発覚したことにより、懲戒解雇を認めたものがあります。その中には、本当は大学中退や短大卒なのに高卒であると、最終学歴を低く詐称していて懲戒解雇が有効となったケースもあります。しかし、学歴を詐称していれば、必ず懲戒解雇が認められるかというと、そう簡単なものでもありません。
雇用関係というものは、労働者と使用者(お店の側)の相互の信頼関係に基礎を置く継続的な契約関係であるということができます。そのため、採用選考時に、使用者が労働者に対して、労働力評価に直接関わる事項だけではなく、当該企業あるいは職場への適応性、貢献意欲、企業の信用の保持等、企業秩序の維持に関係する事項についても、必要かつ合理的な範囲内で申告を求めた場合には、労働者は、信義誠実の原則上、真実を告知すべき義務を負う、とされています。したがって、学歴や職歴を詐称するということは、この真実告知義務に違反したことになり、企業秩序を乱したものとして、懲戒事由の一つになるというのが、基本的な考え方です。
しかし、あらゆる経歴詐称が懲戒の対象となるわけではなく、「重大な経歴詐称」に限られます。その重大か否かのポイントは、(1)本来なら採用されるはずのなかった経歴なのに、経歴詐称によって採用された場合、(2)経歴詐称することにより、本来得るはずの無かった地位、職種、賃金等を得ていた場合、となります。
学歴を低く詐称していて懲戒解雇が認められた裁判例の一つは、高卒以下の社員ばかりの職場に高学歴者を配置するのは労務管理上支障があるとして、採用条件を高卒以下であることを明確な方針としていた企業の事案でした。
以上を踏まえると、ご質問のケースは、応募条件が「学歴不問」となっていたとか、「明確に『高卒以下』」となっていなかったとかであれば、懲戒解雇は認められないでしょう。
雇用関係というものは、労働者と使用者(お店の側)の相互の信頼関係に基礎を置く継続的な契約関係であるということができます。そのため、採用選考時に、使用者が労働者に対して、労働力評価に直接関わる事項だけではなく、当該企業あるいは職場への適応性、貢献意欲、企業の信用の保持等、企業秩序の維持に関係する事項についても、必要かつ合理的な範囲内で申告を求めた場合には、労働者は、信義誠実の原則上、真実を告知すべき義務を負う、とされています。したがって、学歴や職歴を詐称するということは、この真実告知義務に違反したことになり、企業秩序を乱したものとして、懲戒事由の一つになるというのが、基本的な考え方です。
しかし、あらゆる経歴詐称が懲戒の対象となるわけではなく、「重大な経歴詐称」に限られます。その重大か否かのポイントは、(1)本来なら採用されるはずのなかった経歴なのに、経歴詐称によって採用された場合、(2)経歴詐称することにより、本来得るはずの無かった地位、職種、賃金等を得ていた場合、となります。
学歴を低く詐称していて懲戒解雇が認められた裁判例の一つは、高卒以下の社員ばかりの職場に高学歴者を配置するのは労務管理上支障があるとして、採用条件を高卒以下であることを明確な方針としていた企業の事案でした。
以上を踏まえると、ご質問のケースは、応募条件が「学歴不問」となっていたとか、「明確に『高卒以下』」となっていなかったとかであれば、懲戒解雇は認められないでしょう。
グルメキャリー253号掲載

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特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE
昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。
ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201
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