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フードサービス業界の労務相談

※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。

「有期労働契約の更新時に、労働条件の明示は必要か」

質問1

Q.

  飲食店でアルバイトをしているフリーターです。当初、契約期間は1年間という有期契約で採用され、採用時に労働契約書のようなものを受け取りました。それから1年を経過したところで、契約更新するようなことをなんとなく口頭で告げられただけで、特に手続きもなく、そのまま働き続けています。何か問題はありますか。
【24才 男性】
答え

A.

   そのお店の、有期労働契約の更新手続には問題があります。
 雇う雇われるの関係とは、労働者と使用者(お店の側)が、労働契約という名の契約を結ぶことです。意外に思われるかもしれませんが、労働契約は、書面による契約書を交わさなくても、口約束だけで成立します。コンビニでおにぎり1個買うのも売買契約という契約を結ぶことですが、いちいち契約書を交わさないのと同じことです。しかし、おにぎり1個の売買はその場で完了するのに対し、労働契約は継続的な関係であり、将来的に言った言わないのトラブルに発展する恐れがあります。そこで、労働基準法では、このようなトラブルを避けるために、一定の労働条件については明示することを使用者に義務づけ、特に重要な労働条件については書面で明示しなければならないとしています(労基法15条)。
 この書面による明示は、使用者が一方的に作成した通知書を手渡せばいいことになっています。しかし、さらに望ましいのは、お互いが納得したことを証拠として残すために、通知書と同じ内容のまま契約書として、労働者・使用者双方が署名押印することです。ご質問の方は、ひとまず採用時には、通知書か契約書いずれかの方法で、労働条件の明示を受けたようです。
 この労働条件の明示時期は、法律の条文では、「労働契約の締結に際し」となっています。労働契約が有期契約か無期契約かにかかわらず、採用時はもちろんこの「労働契約の締結に際し」に該当します。それだけでなく、有期労働契約の期間満了後に契約を更新する場合、こちらも新たな労働契約を締結することになります。つまり、有期労働契約を更新する場合にも、労働条件の明示義務があり、書面の交付が必要なのです。ご質問のケースは、この点で労働基準法違反となります。
 ところで、労働契約法19条では、有期労働契約が実質的に無期契約と変わらない場合、または契約更新に労働者の合理的期待が認められる場合、一方的な更新拒否(雇止め)が無効になると定められています。契約の更新手続が、口頭だけで済ますとか、口頭さえ無くずるずると継続するとかといった、ずさんな状態だと、使用者がいざ雇止めをしようとしても、労働者には、「実質的に無期契約だった」とか「いつもどおりの更新を期待していた」と主張できる可能性が生じます。お店の側は、このようなリスクにも注意しなければなりません。
グルメキャリー265号掲載
イラスト

飲食店オーナー・経営者のみなさまへ
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久野先生

特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE

昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。

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