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フードサービス業界の労務相談

※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。

「勤続10年以上たって経歴詐称が発覚した場合、懲戒解雇は有効か」

質問1

Q.

  私は、過去に窃盗罪で逮捕され、罰金刑を受けました。今のお店に就職する際、その事実を隠して面接を受け、採用されました。ところが、勤続10年以上たった今になって、そのことが発覚し、懲戒解雇になりました。この解雇はしょうがないことでしょうか。
【29才 男性】
答え

A.

   経歴詐称は、懲戒の対象になることもあります。しかし、ご質問のケースでは、懲戒解雇は認められない可能性が高いでしょう。
 使用者(お店の側)は、労働者を採用するにあたって、どんな人をどんな条件で採用するか広い裁量を持っています。これを「採用の自由」といいます。また、労働契約とは、労働者が労働を提供し、その対価として使用者が賃金を支払うという関係ですが、それにとどまらず、継続的な信頼関係に基礎を置く契約でもあります。これらのことから、使用者は採用選考にあたり、必要かつ合理的な範囲の事項について、労働者に申告を求めることが可能となっています。それに対し、労働者は真実を告知する義務があります。学歴・職歴・犯罪歴といった経歴を詐称することは、この真実告示義務に違反することとなり、懲戒処分の対象になりえます。
 しかし、あらゆる経歴詐称が懲戒処分の対象となるわけではなく、裁判所は、「重要な経歴詐称」に限り、懲戒解雇を認めています。「重要な経歴詐称」にあたるかどうかは、その詐称が無ければ、労働者を採用することがなかったと考えられ、かつ、その採用しないことが、社会的にも相当と認められるかどうかで判断されます。
 犯罪歴の詐称は、重大な経歴詐称にあたると、一般的にはイメージされがちです。しかし、犯罪歴があっても、労働を提供することには直接影響するわけではないため、必ずしも、懲戒が認められるわけではありません。この点では、職業能力に影響する学歴や職歴に関する詐称よりも、むしろ懲戒が認められづらいとも言うことができます。また、刑の執行や執行猶予期間を終えていたり、犯罪から長期間経過していたりの場合にも、懲戒は無効となる可能性が高くなります。さらに、入社から6年後に犯罪歴が判明したケースで、6年間の勤務で会社に寄与したことは、経歴詐称という信義則違反をチャラにするとして、懲戒解雇を無効とした裁判例があります。
 ご質問のケースを検討すると、入社から10年以上、何の問題もなく勤務し、お店に貢献してきたとすると、たとえ過去の罰金刑が発覚したとしても、懲戒解雇は認められない可能性が高いでしょう。
グルメキャリー268号掲載
イラスト

飲食店オーナー・経営者のみなさまへ
飲食業に強い社労士です!
久野先生

特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE

昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。

ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201

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