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フードサービス業界の労務相談

※各記事に関しましてグルメキャリー本誌掲載当時のものになります。法改正により、現在の内容と異なっている場合もございます。ご了承ください。

「全面的に反対の意見書を添付して変更された就業規則の拘束力」

質問1

Q.

  お店のオーナーから、就業規則を変更するとの話があり、従業員の代表者を選出し、意見書を書くようにと指示されました。その変更内容は、基本給が大幅に下げられ、そのほかの労働条件も悪くなることばかりでした。そこで、従業員代表者は意見書に「全面的に反対」と記載しました。しかし、その意見書を添付した就業規則は労働基準監督署に提出され、そのまま受理されました。これでは意見書を書く意味はないのではないですか。
【35才 男性】
答え

A.

   労働基準法に、就業規則の作成についての規定があります。まず、常時10人以上の労働者を使用する使用者(お店の側)は、法律で定められた事項について記載した就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出なければならず、変更した場合も同様です(89条)。就業規則の作成・変更にあたっては、労働者の過半数で組織する労働組合があればその労働組合、なければ労働者の過半数を代表する者意見を聴かなければならず、労働基準監督署への届出には、意見書を添付しなければなりません(90条)。そして、届出後は、就業規則を労働者に周知させなければならないとしています(106条)。
 この中で、「意見を聴く」とは、単に『聴けば』よいのであり、協議をしたり、合意を得たりする必要はありません。たとえ全面的に反対の意見書を添付しても、労働基準監督署は平然と届出を受理します。お店の側は、これで労働基準法にキチンと従ったことになります。
 とは言え、ここまではあくまでも労働基準法で定められた手続を守ったというだけのことです。その変更された就業規則に、法的拘束力があるかどうかとは、まったくの別問題です。
 労働契約法には、就業規則の変更について、「労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」と定められています(9条)。つまり、労働者が合意しなければ、変更した就業規則に法的拘束力はない、というのが大原則なのです。
 ただし、次の10条には、その大原則に対する例外が定められています。その例外とは、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ変更が合理的であれば、たとえ合意がなくても、変更後の就業規則は拘束力があるというものです。そして、この合理性の判断基準は、(1)不利益の程度、(2)変更の必要性、(3)内容の相当性、(4)労働組合等との交渉の状況、(5)その他の就業規則の変更にかかる事情、を総合的に考慮して判断されます。
 ご質問のケースは、オーナーからロクに変更の必要性についての説明もなく、協議をすることもなく、届出手続のためだけに意見書を書かされただけのようです。このような事情で変更された就業規則には到底拘束力は認められないでしょう。
グルメキャリー276号掲載
イラスト

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久野先生

特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE

昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。

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