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フードサービス業界の労務相談

「部下が懲戒処分に該当する行為をした場合、上司も懲戒できるか」

質問1

Q.

 飲食店の店長です。ある店舗スタッフが、長期にわたり不正会計をして、数百万円の横領をしていたことが発覚し、懲戒解雇されることになりました。それに伴い、私までも監督不行届として懲戒されそうです。私自身がした行為でもないことなのに、懲戒の対象となるのでしょうか。
【33才 男性】
答え

A.

 部下が、懲戒処分に該当するような企業秩序を乱す行為を行った場合に、その上司をも懲戒に処することができるか否か、ポイントは上司が「その行為を知ることができたか、防止することができたか」にかかってきます。
 タクシー会社で部下が乗車拒否事件を起こし、その上司が指導監督義務違反として諭旨解雇されたケースの裁判例があります(諭旨解雇とは、懲戒処分の一つで、懲戒解雇より一段階軽い処分と考えてください)。裁判所は、上司に指導監督義務があることは認めつつも、指導には限界があり、乗車拒否を完全に防止することも不可能であり、処分は重すぎると判断し諭旨解雇を無効としました。
 その一方で、部下が横領行為をしていたことを知りうる状況にあったのに見落としていたこと、知っていれば横領行為を止めることができたこと等を理由に、懲戒解雇を有効とした裁判例もあります。
 横領事件に関してはほかにも、部下の行為を黙認していた裁判例や、部下の不正な集金手続により巨額の損害が生じていたのに防止措置をとらなかった上に、発覚を防ぐために自ら経理操作をしていた裁判例において、上司の懲戒解雇を有効としています。
 ご質問のケースにあてはめるとどうなるでしょうか。まず前提として、店長として、お店の会計処理や売上管理に関して管理責任があったと言えますし、部下が不正行為をしないように指導したり監督したりといった責任があったとも言うことができます。その上で、部下の行為を見落としていたことに、どれだけ重大な過失があったかが問題となります。単に経理のチェックを怠り不正を見落としていたのなら過失は大きくなります。逆に、不正行為の手口が巧みであればあるほど、発見は難しくなり、過失も軽いものとなります。
 また、不正行為を行わないように、日ごろから指導・監督して防止に尽くしていたかどうかも問題となります。これを怠っていたなら、過失が問われることになります。
 これらを考慮して、最終的にやはり管理監督責任が認められるようなら、懲戒処分の対象となります。その場合には、過失の度合いに応じて、処分の重さが決定されることになります。ただし、行為をした本人が懲戒解雇になったからといって、上司も懲戒解雇ができるというものではなく、もっと軽い処分に留められるべきです。
 もっとも、部下の不正行為を知りながら、それを黙認していたり、積極的に行為にかかわっていたりという事実があれば、行為者に準じて解雇されることもありえます。
飲食店オーナーの方へ

飲食店オーナーの方へ

 部下が不正行為をしたから、直ちにその上司も懲戒処分が可能となるわけではありません。しかし、そういったケースも想定して、就業規則の懲戒事由には、「部下の管理監督、業務上の指導・注意を怠ったとき」という定めを盛り込んでおくべきです。
グルメキャリー360号掲載

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飲食業に強い社労士です!
久野先生

特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE

昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。

ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201

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