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フードサービス業界の労務相談

「応募者の前勤務先に問い合わせる「前職照会」は違法か」

質問1

Q.

  今のお店に転職してしばらくたってから知ったのですが、採用選考中に、前職のお店に私のことをいろいろ聞き出していたそうです。どういった情報を聞いていたのかは分からないのですが、ちょっと気持ち悪いです。こういった行為は違法ではないのですか。
【30才 女性】
答え

A.

  労働者を募集している企業が、応募者の退職理由や職務内容等について、前職の企業に問い合わせるということ(いわゆる「前職照会」)が、かつてはよく行われていました。実は、前職照会を直接的に禁止する法律は存在しません。したがって、個別の法律に抵触しない限りは、直ちに違法となるわけではありません。とは言え、個人情報の取扱いに敏感になっている昨今において、このような調査をしていることこそが、コンプライアンス意識が欠如していると言わざるを得ません。「聞く方も聞く方なら、答える方も答える方」というものです。
 では、個別に禁止されている法律にはどのようなものがあるでしょうか。
 まず、労働基準法には、「ブラックリストの禁止」と呼ばれる条文があります。使用者(お店の側)が、労働者の再就職を妨害する目的で、あらかじめ第三者とたくらんで、労働者の国籍、信条、社会的身分、労働組合運動に関する通信をしたり、退職証明書や解雇理由書に秘密の記号を記入したりしてはならない、というものです(22条4項)。ただし、「あらかじめ」という文言があることから、事前に示し合わせたわけではなく、個別の照会に応じる場合、この条文に違反したことになりません。
 次に、個人情報保護法に関してです。個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならないことを、原則としています(23条1項)。個人情報保護法に定義される「個人データ」について禁止している条文ですが、コンプライアンスの観点から、退職者に関するあらゆる照会について、答えない企業が多くなっているのではないかと思われます。
 なお、病歴、心身の障害があること、健康診断の結果、犯罪歴等については、2017年5月に施行された改正個人情報保護法で新たに規制対象となった「要配慮個人情報」として、より厳格な取扱が義務づけられ、原則として本人の同意を得ないで取得することを禁止しています(17条2項)。
 さて、ご質問についてですが、どのような態様で、どんな情報が取得されたかは不明のため、今回の前職照会が違法かどうかは断定することはできません。ただ、いずれにせよ、本人の知らないところでこっそり前職に問い合わせるという調査方法は、もはや時代にそぐわないと言ってよいでしょう。
飲食店オーナーの方へ

飲食店オーナーの方へ

 個人情報の問題とは別に、そもそも照会をしたところで、前職の企業にとって都合の悪いことは教えてくれないでしょうから、あまり意味のない調査とも言えます。
飲食店オーナーとしては、前職照会はやるべきことではなく、また、照会を受けても答えるべきではありません。
グルメキャリー366号掲載

飲食店オーナー・経営者のみなさまへ
飲食業に強い社労士です!
久野先生

特定社会保険労務士 久野 航 Wataru Hisano PROFILE

昭和46年生まれ。寿司職人、ファミリーレストランなど外食業界の勤務経験豊富。チェーン系居酒屋店長を経て、社会保険労務士として独立。現場での経験と法的な視点を持ち合わせる異色の社労士として、飲食業の労働環境整備に向けて日々奮闘中。

ひさの社会保険労務士事務所〒114-0023 東京都北区滝野川7-39-3 丸勝マンション201

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