第2回お題
食中毒だ、どうしてくれるんだっ!
今回のお題
今回は、説得力・納得感のあるコミュニケーションに必要なスキルを学びます。
そのためには以下の3点が重要です。
- 聞き手が知りたいことに明快に答え、
- 押さえているポイント(論理)にヌケ・モレがなく
- 結論に至る根拠を、納得感をもって伝える
これができるようになると、お互いの意思疎通円滑になり、信頼関係も生まれてきます。
今回のお題のような「食中毒疑惑」だけでなく、「解雇か否か」「新しい戦略提案」など、様々な局面に活用できるスキルです。
上記の(1)~(3)の全てを頭の中だけでやるのは難しいので、状況を「見える化」するために「ピラミッド・ストラクチャー」というツールを活用します。問題の原因を分析するための構造化手法(※)です。
※構造化とは、情報を整理することで全体像を掴み、本質を明らかにすること。
- ⇒演繹法:
- 一般論(ルール)と観察事項を結び付けて結論を引き出す思考法
- ⇒帰納法:
- 観察事項から一般論(ルール)を引き出す思考法
考えるヒント
- まず情報の整理をする(1)~(3)
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- ポイント(1)
- イシューを特定する
- ポイント(2)
- 主張の枠組み(論点)を考える
- ポイント(3)
- 主張を根拠でサポートする
- そして、主張を論理的に組み立てる(構造化する)(4)~(5)
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- ポイント(4)
- 演繹的思考/帰納的思考
- ポイント(5)
- ピラミッド・ストラクチャーを使う
(1)から(5)まで順を追って説明していきます。
- ポイント(1)イシューを特定する
- まずイシュー(問題・課題)を特定します。
このケースのイシューは、「お客様は腹痛を起こしているのか?いないのか?」
そして、あなたはどちらかの主張を展開することになります。- メインメッセージ(あなたの主張=答え)のイメージ
- 「(xxxだから)お客様は腹痛を起こしている」
- 「(xxxだから)お客様は腹痛を起こしていない」
- メインメッセージ(あなたの主張=答え)のイメージ
- ポイント(2)主張の枠組み(論点)を考える
- 主張の枠組み(論点)に妥当性はあるか?を確認します。
- イシューにダイレクトに答える枠組みになっているか?
- 情報を整理しやすいという理由だけで作った枠組み
- そこにある情報から、目立ったポイントだけを挙げた枠組み
- 何を言えば「腹痛を起こしているorいない」に答えることになるか?どういったポイントが押さえられればよいのか?
- イシューにダイレクトに答える枠組みになっているか?
- どちらの解答を選ぶかは任意ですが、その主張を裏付ける根拠が必要になります。
逆説的に言うと、根拠により主張の正当性を明らかにする訳ですから、1つ1つの根拠を明示する必要があります。 - ポイント(3)主張を根拠でサポートする
- ポイント(4)演繹的思考/帰納的思考
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- 主張を根拠でサポートできているか?
- 演繹的・帰納的に論理が成立しているか?
- 「根拠→(So what?)→主張」が繋がっているか?
- 要素を列挙しただけ
- 抽象的で意味が不明確
- 「主張→(Why?)→根拠」が繋がっているか?
- 隠れた前提が存在している
- 論理が飛躍している
- 「根拠→(So what?)→主張」が繋がっているか?
- このように根拠と主張が繋がっている論理を展開することで、あなた自身の伝えたいことが相手に性格に伝えることができます。
さらに、根拠を明示することでその主張の正当性も明らかになります。 - ポイント(5)ピラミッド・ストラクチャーを使う
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- ピラミッドストラクチャーの作成メリットとは、
- 論理構成を図式化できる
- どのような主張をサポートするためには、何を言えばよいかが明らかになる。
- ピラミッドストラクチャーの作成メリットとは、
以上をもとに、店舗の意思決定した主張とそれを裏付ける根拠を、50代女性の配偶者と名乗る男性に納得するように説明しなくてはなりません。原因分析とそれを主張する的確なコミュニケーションが求められます。
解答例
- 1.「お客様は重度の腹痛を起こしている可能性は低い」
- 食中毒であるとの情報はそれを訴えてきた男性から告知されただけであり、他のお客様から食中毒の訴えは出ていない。今回のケ-スの場合腹痛を訴えるまでの時間で食中毒を発症することは通常考えにくい。よって食中毒の発生を疑うに足る合理的な理由はない。また、この店舗では食材加工時はエンボス手袋を着用するルールになっており食材に触れるのは3名の厨房担当者のみである、これらの事からこの店舗での食材管理に重大な落ち度は見られない。
しかも、現時点でお客様が食中毒と診断された事実は確認できていない。お客様が入院して治療を続けている事実も確認できていない。男性はお客様の配偶者を名乗ってはいるが、身元の確認をしたわけではない。これらのことによりお客様が腹痛を起こしているとは言えない。 - 2.「お客様は重度の腹痛を起こしている可能性が極めて高い」
- 何故ならば、食中毒の発生を完全に否定することができない上に、店舗での食材管理に問題がなかったとは言い切れず、食中毒を訴えてきた男性の主張を信憑性が低いと断定できる根拠がないからだ。その地域において集団食中毒があったことから、事件当時は食中毒が発生しやすい状況だったと言える。保健所への届け出が他のお客様から行われていないかどうかを確認できた訳ではなく、数は少ないが食中毒は1時間で発症することも事実である。これらのことにより食中毒の発生を完全に否定することは出来ない。次に、手袋着用等のルールが当日遵守されていたかどうかはわからない、そして当日お客様が召しあがったチーズの保管状況が適切でなかった可能性がある。このことから店舗での食材管理に問題がなかったとは言い切れない。その上、お客様が既に退院していることの確認が取れた訳ではなく、お客様の症状について病院に確認が取れた訳でもない、年配のお客様なので症状が重く出ていることは考え得る。よって食中毒を訴えてきた男性の主張を信憑性が低いと判断できる根拠がない。
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