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タイトル

第15回 三代目なばや

2012.9.6
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寡黙な職人?いやいや、気さくでお話好きのおやじさんなのでした。

「おつかれさまです」と生ビールを運んでくれる女将さん。凍ったジョッキに、クリーミィな泡がふっくら♪ 樽ごと冷やしているから冷たさにパンチが効いて、のどキュンのうまさ!

「何本か、焼きましょうか?」とタイミングよく、店主の横山さん。言われるまま「一の酉(串焼き8本コース)」をいただくことに。

焼き場の前の横山武さんは、寡黙な職人といった感じ。でも、話しかけにくいタイプではありません。焼き鳥やお酒のことなど尋ねると、よく喋るおやじさんでもあるのですね。

「なばや」の由来は、そのむかし佐竹藩の御用商人がつくった屋号「那波屋」から。父の代には上野のガード下でお店を創業したそうです。

正確には創業何年なんでしょう?

「昭和20年とか25年くらいの創業なんじゃないかなぁ。正確なところはわからない。古すぎてね。高度成長、バブル崩壊、大震災と、さまざまな時代を通り過ぎてきたってわけです」

日本酒のおすすめを尋ねると、秋田の「やまとしずく」が出てきました。横山さんが大徳利に注いでくれたあと、「そのお猪口をここにおいて」の指示に従うと、一升瓶からお猪口にも注いでくれるではありませんか! 一杯トクした気分!!

「以前はごく普通な感じで、徳利に表面張力にして出してたんだけど、徳利からお猪口に注ぐとき、こぼすお客さんが多くてね。酒がもったいないじゃない(笑)。それでこういうスタイルに変えたの。『こぼしたつもりのサービス』って呼んでいる(笑)」

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老舗店主の横山さんに、「独立」の考え方を語ってもらった。

夜は焼き鳥屋さんですが、ランチでは鶏をいかした「重もの」も人気です。焼いたもも肉とそぼろがごはんの上に敷き詰められた「とりめし重」もおいしそう♪

さて、ほろ酔い加減になっきたころ、後半戦の串が出てきました。代々継ぎ足しの秘伝のタレで焼かれた焼き鳥。なかでも、レバーはしっとり&まったりで秋田の「やまとしずく」と合う!

ときどきタイミングよく、枝豆や自家製ピクルスなどが出てきますが、これらは横山さんからのうれしいサービス。いっぱい食べて帰ってね、という家庭的なあたたかさを感じます。

家業として創業した「なばや」さんに、老舗の店主だからこそ聞いておきたいがありました。それは独立について。

「家業としての独立はむずかしい時代になってきたと思います」と横山さん。

むずかしいとはどういうことでしょう?

「私がここで店をやろうと思ったころは、子育てが半分終わっていました。半分というのは親に預けて仕事することもできたから。でも核家族化が進んでいる今は、子育てとお店の両立はとても難しい時代です。つまり将来、あたたかい家庭をもって暮らしたいのか。それよりも、自分の店をもつことの方を優先したいのか。そこを考え抜かないとあとあと辛くなると思います。家庭なんていらない、子供もいらない。その代わり、繁盛店をつくるんだ! それが自分の人生だ! と本気で思える人は独立に向いているかもしれないですね」

右から2番目の串は、タレに漬け込んだうずらの玉子とササミの競演、その名も「いとこ焼き」。日本酒がすすむ串なのでした。

横山さんオススメの「やまとしずく」。農家と一体の酒米づくりに挑んでいる秋田の酒蔵所の作品。しみじみうまい酒でした。

〆は「串焼おにぎり」。ほどよい醤油味でごはんが串からほどけないように上手に焼かれていました。ホクホクとお腹いっぱい!

店舗情報
三代目なばや
東京都台東区上野1-6-2 原田ビル1F
tel.03-3836-5594
営:ランチ11:30~13:00
     ディナー18:00~22:00
休:土・日・祝
交:地下鉄千代田線湯島駅徒歩3分
<予告>次回のリレーキーワードは?
「なばや」日本酒好き仲間「よし房 凛」

仕事にはちょっぴり頑固で、人に対しては父親みたいなやさしさもある。横山さんに会いたくて来店するお客さんもきっと多いのではないでしょうか。さて、次のお店は? 「家と店の途中にあるおそば屋さんで『よし房 凛』さんをご紹介したいですね。日本酒にも力を入れていて、私の好きなそば屋さんです」。ありがとうございます。湯島の食べ歩きがつづきますが、人が面白い! それでは次回「よし房 凛」さんでお会いしましょう!

文:高木 正人
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